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情景を音に落とし込みたい

――他のインタビューで、〈音を聴くと色や情景が浮かぶことがある〉っておっしゃってましたけど、視覚的なイメージが音楽と分かち難く結びついているのでしょうか?

「それは結構ありますね。特に、5人でツアーを周ったときに、色々な情景を5人で見ていたのは大きかったですね。アイスランドの自然とか、テキサスの砂漠とか、すごく印象的だったから、どうにかして音に落とし込めないかなって考えて。〈アイスランドのあの情景を覚えてる?〉っていう話になって、自然にビジョンやイメージを共有できた。

やっぱり気候とか風土によって出てくる音が違うんですよ。日本で梅雨の時期にスタジオに入ると、音が湿っているような雰囲気になったりする。雨が降っている時と、外がピカピカ晴れている時で、ジャムセッションのノリが違ってくるんです」

――アルバムの1曲の“もなかのなか(Monaka)”はすごくキャッチーで耳を惹きますね。基本はロックなんだけど、合間に民謡的な節回しがあって、違和感がありつつも最高の1曲目だと思いました。これは自然に出てきたんですか?

「Tomoの実家が石川県の温泉街なんです。温泉の街って民謡が周りに普通にある環境らしくて。そこからの影響もあると思います。僕らが知らない地域の民謡を知って、〈ええ、面白いな!〉って思って」

『クモヨ島(Kumoyo Island)』収録曲“もなかのなか(Monaka)”

 

長髪が表すオルタナティブな美学

――ルックスの話になりますが、全員が長髪なのは、何か意味合いがあるんでしょうか?

「日本男性の髪が長いのって、アウト・オブ・ソサエティーを意味しちゃうんですよね。でも元々日本人って、ちょんまげを結っていたし、男性でも髪が長い人も多かった。日本人男性にとっては、それを称揚する美意識もあったと思います。でも、西欧文化の波が入って来たときに、男で長髪はおかしいでしょって言われて。男は髪を短くして、女性は髪長くて、という西欧の美意識に影響されたんですよね。でも、長い髪のウェーブとか癖とかって皆違うじゃないですか。それが皆個性的で綺麗だなと思ってたんですよ。5人が髪の毛が長くて風とかでぱーっと揺れるのが綺麗だなって思って。

あと、日本人は髪が黒いって思われがちですけど、髪の毛を伸ばすと、みんなちょっと色が違ってくるんです。赤毛っぽかったり、ちょっとだけ茶色っぽかったりとか、色のトーンは皆違っていて。そういう綺麗さって、ほぼ完全に忘れ去られていると思うんです。

日本で育ったときに、髪が長いと〈女の子みたいだね〉とか、〈なんで髪の毛を伸ばしてんだよ〉って言われるけど、それは僕らの美意識が元にあるものなので。マッチョな男性像とは少し違った綺麗でかわいくてかっこよい見た目にしています。そういう良さもあるんじゃないかなという視点で見ても面白いものを作りたいという意識はありました」

 

〈叩けば音が出る〉という非技巧派の精神

――2000年前後ぐらいに、ジャムセッションを軸に長時間演奏するジャムバンドたちが活躍して、日本にもフィッシュやメデスキ、マーティン&ウッドとかが来ていたんです。その元をたどると、グレイトフル・デッドに行きつくんですよ。

「あー、グレイトフル・デッドはギターのDaoudがすごく好きで、僕も何回も聴いてみたんです。確かにかっこいいんですけど、巧すぎて危なさが足りないというか。もうちょっと素人が一生懸命、無理して演奏している感じが僕は好きなんですよ。自分たちはミュージシャンというアイデンティティーがあまりないところから始めたので、それがずっと原点としてあって。グレイトフル・デッドは今聴いても、演奏はすごいけど感動はあんまりしないですね。あと、下手なのに巧そうに見える人も好きで」

――例えば誰でしょう。カンにいたダモ鈴木さんとか?

「ダモさんはそうですね。別にめちゃめちゃ歌上手いとかじゃないけど、かっこいい」

――彼も技術云々で評価されたわけじゃないですしね。

「そうなんです。日本で音楽をやるとなると、何か楽器を持ったら基礎練習して、ある程度上手くなってから曲をやるのが一般的だと思うんです。けど、僕は基礎練習を完全に飛ばして、なんとなくこの楽器はこういう音が出るから、やってみようというスタンスで。日本にいたときに、そういう感覚の人っていなかった気がします。日本では、クラフトマンシップが重要とされているから。僕はドラムのスティックの持ち方もよく分からないところから、まあ叩けば音が出るからそれでいいじゃんっていう。その延長でここまで来たので、これからもそういう精神は大事にしたいですね」

 


RELEASE INFORMATION

幾何学模様 『クモヨ島(Kumoyo Island)』 Guruguru Brain/BEAT(2022)

■国内盤CD
リリース日:2022年5月25日(水)
品番:BRC702
価格:2,750円(税込)
国内盤特典:解説封入

■国内盤CD+Tシャツ(数量限定)
リリース日:2022年5月25日(水)
品番:BRC702T
価格:7,150円(税込)

■デジタル
リリース日:2022年5月6日
配信リンク:https://fanlink.to/kikagaku_moyo_kumoyo_island

TRACKLIST
1. もなかのなか(Monaka)
2. 青の舞(Dancing Blue)
3. エッフェ(Effe)
4. ぼくの海(Meu Mar)
5. 段ボールの山(Cardboard Pile)
6. ゴムゴム(Gomugomu)
7. 白昼夢の蜃気楼(Daydream Soda)
8. 鬼百合畑(Field Of Tiger Lilies)
9. やよい、ゐやおい(Yayoi, Iyayoi)
10. 昼寝のうた(Nap Song)
11. メゾン シルクロード(Maison Silk Road)

 

LIVE INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL ’22

2022年7月29日(金)、30日(土)、31日(日)新潟・湯沢 苗場スキー場
※幾何学模様は7月29日(金)に出演
https://www.fujirockfestival.com/