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聴きやすいけど、J-Popではない『MELODIC HEAVEN』

――『MELODIC HEAVEN』はいつから制作を始めたのですか?

PEAVIS「俺のソロアルバム『PORTRA¥AL』(2021年)が出来た頃には、『MELODIC HEAVEN』の曲も半分くらい出来てました。そこから客演のアーティストを入れていくのに、時間はかかりましたけど、アルバムのベースは去年の夏にはほぼ出来上がってましたね」

――新作は本当に聴き心地がよくて、ブーンバップからダンスミュージック、いろんな音楽性がちりばめられていながら、ヒップホップという軸はブレていないアルバムでした。全体としてどんなところにこだわりましたか?

PEAVIS「聴きやすいけど、J-Popではないというバランスですね」

NARISK「ビートの聴きやすさにはこだわりました。PEAVISもそこはかなり意識して取り組んでくれたと思います。ただ、リリックの中には、考えさせられるようなワードがあって、そのワードチョイスによるリリックが楽曲の軸として機能しているからこそ、商業的なポップスとは一線を画した作品にはなったと思っています」

 

Helsinki Lambda Club橋本薫はPEAVISの中学校の同級生

――『MELODIC HEAVEN』では、アートワークから客演のアーティストまで、おふたりの地元、福岡出身のアーティストをフィーチャーしています。今の福岡の街の中で鳴っている音が一枚にパッケージされているようなアルバムだと思いますし、福岡は本当にタレントが豊富だなと率直に感じました。このメンバーというのはどうやって決めていったんでしょうか?

PEAVIS「ヒップホップだけじゃなく、いろいろなジャンルの福岡のアーティスト/クリエイターとコラボするというのはテーマとしてありました。ひとつの側面だけでなく、多面的な福岡の表情を見せたかったんです」

――おっしゃったようにラッパー以外の参加ミュージシャンが興味深かったです。ミュージックビデオが公開された“Live Long”にはギターロックバンド、Helsinki Lambda Clubの橋本薫さんがボーカルで参加されていて。PEAVISさんと橋本さんはなんと中学校の同級生だそうですね。MVでもおふたりの過ごした母校や地元を訪ねていました。

PEAVIS「母校に行ったり、昔住んでいた家の近くを歩いたり、いつもと違う質感のMVに仕上がって満足しています。監督してくれたのはRichardという映像作家で、彼も福岡出身です」

『MELODIC HEAVEN』収録曲“Live Long”
 

――“Live Long”では、橋本さんが普段とは違うボーカルを見せていて新鮮でした。

PEAVIS「薫にはレファレンスとしてリル・ピープとかXXXテンタシオンの楽曲を送ったんですけど、バッチリなボーカルが返ってきましたね。エモな橋本薫が表現されているんじゃないかと思います。生と死にまつわる曲にしたかったので、そういった意味でも薫のボーカルがハマりました」

――なぜそのような曲を作ろうと思ったのですか?

PEAVIS「亡くなった自分の父親について、最近になって母親が話してくれたんですが、そのことが死生観について考えるきっかけになったんです。今まで父親のことは教えてくれなくて、親子のタブーみたいな感じだったんです。もう話してもいいだろうと思ったのかな。自分のルーツが半分わからないことでアイデンティティーの欠如を自分の中では感じていたけど、納得もしたしスッキリしましたね。そこで、曲でも言ってますけど〈曲とDNAくらいかも 俺たちがこの世に残せる物〉と思ったんです」

 

ハウスミュージックの質感を加えたkiki vivi lilyとの“Continue!”

――また、kiki vivi lilyさんをフィーチャーした“Continue!”は他の曲とは異なり四つ打ちのトラックで、ハウスの質感を感じさせますね。

NARISK「もともとハウスが好きなんですよ。LAにいた頃、ティードラ・モーゼスの“Be Your Girl(Kaytranada Edition)”を聴いてヤバイと思ってからハマって、自分のルーツのひとつとしてあります。『MELODIC HEAVEN』はゆったりしたビートがほとんどなので、こういう四つ打ちもいいなと思って作りました」

『MELODIC HEAVEN』収録曲“Continue!”
 

――“Continue!”のビデオも福岡出身のイラストレーター/アニメーターのAyaka Ohiraさんが監督しています。ゲーム好きにはたまらないアニメーションですが、これは曲のコンセプトから着想したんですか?

PEAVIS「Ohiraさんと話しながら決めていきました。やられても何度でも挑戦するというゲームに擬えたリリックを踏襲しつつ、死んで復活するのはOhiraさんのアイデア」