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20年経って出てきた宝物のような未発表音源

それだけでも購入の価値ありだが、この『Super Deluxe Edition』が凄いのは、Disc 2と3に計22曲もの未発表音源が収録されていること。バージョン違い、アレンジ違いだけでなく、初めて聴く楽曲もいくつかあり、しかもそのクォリティーがどれも高い。どうしてこれがオリジナル盤から落ちたのだろうかと不思議に思えるものすらある。大袈裟じゃなく宝物が20年経って出てきたような感覚があり、ローリング・ストーンズ『Live At The El Mocambo』にも引けを取らない嬉しい驚きを自分は覚えた。

まずDisc 2。後半6曲は『Come Away With Me』が出る前に準備作として10万枚プレスされたミニアルバム『First Session』をその順番通りに並べたものだが、1曲目から11曲目は未発表音源。そのうち4曲目以降がファーストセッションのアウトテイクだ。

1曲目“Spring Can Really Hang You Up The Most”はエラ・フィッツジェラルド、カーメン・マクレエ、カサンドラ・ウィルソンほか数多くの歌手が取り上げてきたジャズスタンダードで、ノラは通っていた高校の音楽室にてピアノ弾き語りで録音し、そのデモをブルーノートに送付。つまりキャリア最初期の音源になるが、楽曲の性格上もあってノラが自分のオリジナル曲よりもジャズシンガー的な節回しで歌っているのが新鮮だ。

『Come Away With Me - 20th Anniversary Edition』収録曲“Spring Can Really Hang You Up The Most (Demo)”

やはりスタンダードで、ナット・キング・コールやディーン・マーティンでよく知られる2曲目“Walkin’ My Baby Back Home”も同様。『Come Away With Me』はジャズアルバムではないが、この頃のノラはジャズのスタイルでスタンダードを歌うことを楽しんでいたわけだ。

『Come Away With Me - 20th Anniversary Edition』収録曲“Walkin’ My Baby Back Home (Demo)”

3曲目“World Of Trouble”はジェシー・ハリスの手による素晴らしいバラード。イーサン・ホークが監督・出演した2007年のドラマ映画「The Hottest State(痛いほどきみが好きなのに)」のサントラ盤が初出だが、今回聴けることになったデモはカントリー風味で、ノラの歌唱は素朴ながらも味わい深い。この隠れた名曲はこれによってより高く評価されることだろう。 

『Come Away With Me - 20th Anniversary Edition』収録曲“World Of Trouble (Demo)”

4曲目“The Only Time”以降のファーストセッションアウトテイクもどれもよく、7曲目“Just Like A Dream Today”などはオリジナル盤に収録されなかったことが勿体なく思えてくるほど。サラ・ヴォーンやナット・キング・コールらで知られるスタンダード“When Sunny Gets Blue”のピアノにもノラのシグニチャーが既にあって、同様に感じた。

『Come Away With Me - 20th Anniversary Edition』収録曲“Just Like A Dream Today (First Sessions Outtake)”