充実のニュー・アルバム『L.S.』とメンバー4名の卒業――グループに残ることを選んだminanが明かす、現体制ラストシーンの野音へ向かう現在の心境とその先の展望とは?
2017年より不動の5本マイクで活動してきたリリスクことlyrical schoolが、今年4月、ニュー・アルバム『L.S.』のリリースと前後して、現体制での活動終了を発表。メンバーのうちyuu、hime、hinako、risanoの4人は、7月24日の日比谷野外音楽堂でのワンマンをもって卒業することになった。唯一グループに残ることを選んだminanは、この状況に至るまでの経緯を気丈に振り返る。
「メンバーに辞める意思があることを聞いたのは昨年末で、そこから実際に現体制での活動終了が決まったのは、このアルバム制作も終盤に入っていた3月頃でした。私はいまの5人でのリリスクが大好きなので、すごく残念ではありますけど、みんなが選択したのであれば、私はそれを受け入れて応援するしかなくて……。実は私も現体制終了を発表する前日の夜まで(自身の進退を)悩んでいたくらいで。いまでこそ笑って話せますけど、当時はその話題を耳にしただけで自然と涙が溢れました(苦笑)」。
リリスクに旧体制時代の2013年7月に加入したminanは、いまでは最古参メンバーとして、ソロ活動と並行しながらグループの支柱として活躍している。なので体制の移行を経験するのは今回で2度目なわけだが、リリスクでの活動を続ける理由も心境も、1度目のときとは異なるようだ。
「前回のときは、リリスクや自分自身の表現活動でやり残したことがたくさんあったので、〈自分のため〉というのが大きな理由だったんですが、今回はファンの方や長い間お世話になっているスタッフさん、制作陣の皆さんに対して、いま私が辞めるのは不義理だと思ったので、皆さんの応援に報いるために続けるというのが大きいです。それと、私はいま31歳なんですけど、20代の頃のほうが活動について悩むことが多かったんですね。私はもともと30歳で芸能活動を辞めると決めていたんですけど、コロナ禍と20代ラストの時期が重なってしまったので、もう少しだけ延長しちゃおうと思って(笑)。すでに30代に入っていたからこそ、逆に吹っ切れていたところもあるのかもしれないです」。
そんな状況のなか届いた新作『L.S.』は、結果的に現体制での最後のアルバムにはなるが、制作の段階では特別そのことを意識していたわけではなく、純粋に現在のリリスクの充実ぶりを伝える作品になった。
「〈集大成〉と言うと寂しさもありますけど、いまの5人でできること、やりたいことのすべてを詰め込んだアルバムになりました。今回はテーマが〈L.S.=lyrical school〉ということで、制作陣の方々には皆さんがそれぞれ思うリリスクを表現して楽曲を作っていただいたんです。なのでどの曲にも皆さんの愛がすごく詰まっています」。
その言葉通り、馴染みのALI-KICKと大久保潤也(アナ)提供の表題曲“L.S.”は、過去作のフレーズを散りばめつつ、次々と変化するトラックで各人の見せ場を用意したリリスク愛に溢れるナンバー。「(リズムを)倍で取り慣れていないお客さんのために歌詞でノリ方を説明していて、ヒップホップ・アイドルとして大正解な曲です(笑)」と語るLil’Yukichi製のバウンス・チューン“Bounce”、MURO × grooveman Spot × KASHIF × ZEN-LA-ROCKによる80sファンク調の“ユメミテル”(フックでは女性ラッパーの草分け、HACの“SPECIAL TREASURE”を引用!)といったニクい楽曲も織り交ぜつつ、Rachel(chelmico)が大きな意味での〈別れ〉をテーマにリリックを書いたという“バス停で”あたりから、作品はエモーショナルな方向に舵を切る。KM × Lil’ Leise But Gold提供の“The Light”、valknee × Lil Soft Tennisの“Find me!”などエモ・ラップ以降の潮流を捉えた楽曲も新鮮でグッとくるが、なかでも素晴らしいのが、人気曲“LAST DANCE”に連なるような内容の“LAST SCENE”。まるで現在の5人の心情を映したような歌詞に胸が締め付けられる、甘くメロウな幕引き曲だ。
「これはまさに愛の曲だと思います。いまの体制のリリスクは、終わりがあるなかでのいまの儚さ、刹那的な煌めきみたいなものをずっと歌ってきたんですけど、いままさに私たちがそういう状況になったなかで、それが決してつらいだけではないことを、曲を通して伝えてくださっていて。野音ではこの曲を笑顔で歌いたいんですけど、やっぱりウルッとしちゃいそうです(笑)」。
minanの〈もう少しこのままで 夢ならさめないで〉という歌声が余韻を残すなか、『L.S.』はラストシーンを迎えるわけだが、リリスクの物語はまだ終わらない。9年に渡る活動の中で〈終わり〉の切なさや儚さを身をもって経験し、表現してきたminanにとって、リリスクという〈終わらない夢〉を実現することこそが、新しい夢であり、目標なのだ。
「新体制ではいままでとは少し違うエッセンスも取り入れつつ、新しいことをしたいと思うので、自分の中に何か発信したいものを持っている人が新メンバーとして入ってくれたら嬉しいですね。私はプレイングマネージャー的な立ち位置になれたらいいなと勝手に考えていて(笑)。次のリリスクがどういう形になるかはまだわからないですけど、ずっと続けていける環境を整えて、アイドルを仕事として捉えて一緒にやっていけるグループを作りたいですし、そういうアイドル・グループの第一人者になれたら素敵だなって思います」。
左から、ALI-KICKが参加したTARO SOUL & KEN THE 390の2021年作『LAP RECORD』(DREAM BOY/starplayers)、アナの2019年作『時間旅行』(SECOND ROYAL)、KMの2021年作『EVERYTHING INSIDE』(Mary Joy)
左から、6月1日にリリースされるchelmicoのニュー・アルバム『gokigen』(unBORDE)、7月13日にリリースされるgrooveman Spot & Mahina Appleのシングル“My Turn”(Scotoma)、MUROの2021年のミックスCD『DIGGIN’ "GROOVE-DIGGERS"2021』(Pヴァイン)
lyrical schoolが現体制でリリースした作品を一部紹介。
左から、2018年作『WORLD’S END』(BootRock)、2019年作『BE KIND REWIND』、2020年のミニ・アルバム『OK!!!!!』、2021年作『Wonderland』、minanの2021年作『ttyl』(すべてビクター)