
山下達郎さんの待望のニューアルバム『SOFTLY』が、2022年6月22日にリリースされました。タワーレコードでは、達郎さんご自身が渋谷店へ訪店&サインをしていただいたことをはじめ、店頭展開、特設サイトや〈NO MUSIC, NO LIFE.〉ポスター、連載〈週刊ライドオンタイム〉などなどで、全店が総力を挙げて11年ぶりの新作を大プッシュしています。今回は『SOFTLY』のリリースを記念して、タワレコのスタッフのみなさんに〈タツローと私〉というテーマのコメントを募りました。『SOFTLY』について、達郎さんの音楽とともにあった日々の思い出について、それぞれの文章を楽しんでもらえればと思います(なお、この記事では渋谷店と新宿店の店頭展開の写真を掲載していますが、リリース当日に撮影したものですので、現在は展開が終了していることもございます)。 *Mikiki編集部
後藤博子(渋谷店)
小学校の運動会。運動が苦手な私が、唯一ドキドキ出来る時間は“アトムの子”が流れる時間でした。
イントロを聞くだけで心が踊り出すような気持ちになった事は、今でも鮮明に覚えています。
その後大人になり、ある悩みを打ち明けた友人が教えてくれた曲が“蒼氓”でした。
自分の中にあるキラキラした達郎さんのイメージとは異なった賛美歌の様な世界に、心が救われました。
小学生の私を助けてくれた達郎さんに、大人になっても救われ、もっと達郎さんを知りたいと思った事がきっかけで、
今現在、ラジオも欠かさず聞き、オールディーズの沼にハマる日々です。
私の中の達郎さんは、おしゃべりな女神様であり音楽の先生の様な、特別な存在です。
達郎さんの音楽は〈自分は素のままでいてもいいんだ〉と思わせてくれます。
日常の嫌な事や、音楽的な難しい事は考えず、身を委ねてみて下さい。
最高の音楽と最高の音質に出会えるはずです。

田中 学(新宿店)
さて困ったものである。何がって、山下達郎(以下タツローさん)の11年ぶりの新作『SOFTLY』、そのアナログレコード盤のことである。結論から申せばこの盤、もはや〈アナログ〉ではないのである。正確には〈アナログの次元ではない〉、という事か。
古くからアナログレコード(以下レコード)をやってきた方なら周知だと思いますが、本来レコードの品質および音質管理はかなりズサンで、同じ作品でも生産国や生産時期、はたまたプレスされた順番でも再生音が大分異なるやっかいなシロモノなのです。さらにはそれを再生するオーディオ機器やリスニング環境も重要なファクターとして加味され、それらが幾重にも作用した結果、我々オーディオ好き(マニアではない)はいっちょ前に音が良いだの悪いだのを楽しんだりするワケです。
あまりネット情報として出回ってませんが、おそらくアナログテープをマスターとした(録音の良い)レコードを、同じ時代に製造されたオーディオ針で聴くともうそれは天にも昇るキモチEEE音で鳴ってくれるのですが、デジタル音源をマスターとした現行のレコードをシュアーのV15だD社のMCだので聴いても地味ィ~な音でしか鳴ってくれないのです(あくまで個人的な所感)。逆にそれらの現行レコードを、現代の質の良いMM針で聴くと、あらビックリ元気ハツラツな音で鳴る傾向があり(あくまで個人的な所感)、聴くレコードによって針を取っ替え引っ替えして自分なりのイイ音を追求するワケです。
でタツローさんの『SOFTLY』、この盤のスゴイ所は針を選ばない! 44Gと同クラスのMM針でも、前述したV15やMC針でも(それ以上のハイエンド針は持ってないのでワカリマセン)、語弊はありますが〈同じイイ音〉で再生してくれるのです。個人的にはこんなレコード初めて……❤ 勿論CDとは異なるアナログ感もあるのですが、エッジィーで粒だったモダンな音像、そしてとにかく出音にストレスが無い……これ、もしかしてイマ流行りの安価なオールインワンのプレーヤーでもソコソコの音で鳴っちゃうんじゃない……? つまりイジってもイジらなくても音がイイ、ってコトでオーディオ好きなワタクシ困っておる次第なのです。
さて、ポップスのアルチザンが仕掛けた〈音質管理がアナログの次元ではない〉レコード、貴方のオーディオではどのように鳴るのでしょうか?
松本創太(渋谷店)
現在26歳の私にとってタツローさんの最初のイメージは、大瀧さんと同じく〈山に篭った仙人〉。ユーミン・桑田佳祐派(?)の父からは〈なんでも一人で作る人〉とだけ教えられほとんど聴かされずに育ちました。高校生の時に『Ray Of Hope』がリリースされ、歌詞カードを見ると確かに1人で殆ど演奏している曲が多い。なるほど……と聴き進めて衝撃を受けたのが“俺の空”。まりやさんを中心としたグッドポップスのイメージが一気に覆る、オートチューンボーカルに密室ファンク、そして躍動するギターソロに雷に打たれました。そこから『OPUS』で活動の全容を知り、掘り返しがスタートしました。
さらにタツローさんのお陰で沢山のソウルやファンクの名盤に出会うことができました。今ではすっかり〈一生ついていく親分〉といったお方です。
余談ですが、父の死後レコード棚を整理していたらまさかの『FOR YOU』や『MOONGLOW』のレコードが出土。〈親父、好きだったんじゃん〉と思わず突っ込んじゃいました。今ではそのレコードも父との会話も良い思い出です。
塩谷邦夫(TOWER VINYL SHIBUYA)
遂に発売された11年振りのオリジナルアルバム。嬉しいです。“RIDE ON TIME”はヒット曲として知っていたけれど、アルバム初タツローは『FOR YOU』。英人イラストに憧れてカセット用のレタリングを頑張りました。最近は『オンスト』シリーズに針を落とすことが多く、その流れでの『SOFTLY』でした。達郎さんが青春期に見た東京の景色には間に合わなかったけど、大人になっても同時代音楽として聴くことができている気がする幸せ。
村越辰哉(新宿店)
世界的なシティポップブームにおける達郎さんの再評価の凄まじさを店頭で実感しているがゆえ、待望の新作にも堂々たるシティポップ味を期待していた節がありましたが、そうは問屋ならぬアルチザンが卸しませんでした。いつにも増してシンガーソングライター的な佇まい。愛や優しさに溢れたまなざしで市井の人々に寄り添う楽曲達が揃ったアルバム。シングル曲もアルバムで聴くことでグッとパーソナルな問いかけに聴こえ沁みます。謎めいていたタイトルとジャケットも音を聴くと実に腑に落ちます。これしかないと!
天野龍太郎(Mikiki編集部)
〈タツローと私〉というテーマなので、せっかくならパーソナルな思い出を書いてみたいと思いますが、そうはいっても、〈母親や父親のカーステレオから〉といったような、素敵なエピソードは残念ながらありません。89年生まれの私にとって達郎さんは、まず最初に〈テレビから歌が流れてくる人〉でした。原体験は、なんといっても「ポンキッキーズ」。そう、“パレード”です。達郎さんの作品は基本的にすべて聴いていますが、“パレード”はいまだに不動のマイ・フェイバリット・タツロー・ソングのひとつです(シュガー・ベイブ『SONGS』の94年盤に収録されたデモ版も大好き)。名曲“LOVELAND, ISLAND”も“RIDE ON TIME”も、やっぱりそれぞれ「ロング・ラブレター〜漂流教室〜」と「GOOD LUCK!!」というドラマの主題歌として聴いたのが初めてでした。達郎さんのディスコグラフィーをたどってその素晴らしさに開眼したり、バンドメイトが作った“SUGAR”オマージュの曲を演奏したりするのはその後、10代後半から20代前半にかけてのことですが、三つ子の魂百までといいますか、テレビでの出会いの記憶は現在も強烈なものとして残っています。達郎さんの曲はいまもテレビや映画といったさまざまなメディアで重要な役割を果たしているので、10代、20代のリスナーが自分と同じような出会いをしてくれることを願ってやみません。
と、前置きが長くなりましたが、今回の『SOFTLY』は、達郎さんにとって、そして私たちファンにとって、実に11年ぶりのオリジナルアルバムです。『SONORITE』も『Ray Of Hope』もリリースされてすぐには聴かなかったので、〈今回こそはリアルタイムでこのBig Waveに乗るぞ〉という意気込みでフラゲ日に全フォーマットを大人買いしました。シングルや既発曲が中心になっていますが、改めて〈アルバム〉として向き合ってみると、新しい発見や楽しみがたくさん詰まった各曲の多彩さ、豊穣さ、複雑さ、奥行き、深さに気づいていきました(CDをスピーカーで聴いてみると音が良くて、〈さすがです!〉とうなりました)。さらに、災禍や戦争に見舞われた現在の状況が如実に反映された“OPPRESSION BLUES(弾圧のブルース)”など、アルバムタイトルに反して(だからこそ、かもしれませんが)、どこかヘビーな面持ち、すごみを湛えてもいるのが『SOFTLY』という作品だと感じました。
『SOFTLY』は、この一週間ですでに何度も何度も聴いた作品ではありますが、2022年を通じて、いや、その先もずっと、繰り返し聴くことになるアルバムだろうと思います。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2022年6月22日
■初回盤(2CD)
品番:WPCL-13359~60
価格:4,400円(税込)
■通常盤(CD)
品番:WPCL-13361
価格:3,300円(税込)
■アナログレコード(2枚組)
品番:WPJL-10155~6
価格:4,620円(税込)
■カセット
品番:WPTL-10004
価格:3,300円(税込)
※初回盤CDのみ、最新アコースティックライブ音源7曲を収録したプレミアムCD付き!
TRACKLIST
1. フェニックス[2021 Version] ~NHK・SDGsキャンペーン「未来へ17アクション」テーマソング~
2. LOVE’S ON FIRE
3. ミライのテーマ ~映画「未来のミライ」オープニングテーマ~
4. RECIPE(レシピ)~TBS日曜劇場「グランメゾン東京」主題歌~
5. CHEER UP! THE SUMMER ~フジテレビ系木曜22時連続ドラマ「営業部長 吉良奈津子」主題歌~
6. 人力飛行機
7. うたのきしゃ ~映画「未来のミライ」エンディングテーマ~
8. SHINING FROM THE INSIDE ~エステティックTBC/ソシエ エステティック TV-CMソング~
9. LEHUA, MY LOVE ~「JAL HAWAII Style yourself」篇CMソング~
10. OPPRESSION BLUES(弾圧のブルース)
11. コンポジション ~NHKドラマ10「第二楽章」主題歌~
12. YOU(ユー)
13. ANGEL OF THE LIGHT ~Nikon企業CM曲~
14. 光と君へのレクイエム ~映画「陽だまりの彼女」主題歌~
15. REBORN(リボーン) ~映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」主題歌~
プレミアムCD ※初回盤CDのみ
「The Latest Acoustic Live」
~Recorded Live, 2021/12/03 at Tokyo FM Hall, Tokyo~
1. ターナーの汽罐車
2. ポケット・ミュージック
3. あまく危険な香り
4. PAPER DOLL
5. パレード
6. BELLA NOTTE
7. HAVE YOURSELF A MERRY LITTLE CHRISTMAS
※2021年12月3日に〈サンデー・ソングブック 1,500回記念〉としてTOKYO FMホールで行われたアコースティックライブから貴重かつ最新のライブ音源7曲を収録
PROFILE: 山下達郎
1953年、東京都出身。75年、シュガー・ベイブとしてシングル“DOWN TOWN”、アルバム『SONGS』でデビュー。76年、アルバム『CIRCUS TOWN』でソロデビュー。80年発表の“RIDE ON TIME”が大ヒット。アルバム『MELODIES』(83年)に収められた“クリスマス・イブ”が、89年にオリコン週間シングルランキングで1位を獲得。30年以上にわたってランクイン、日本で唯一のクリスマススタンダードナンバーとなる。84年以降、竹内まりや作品のアレンジおよびプロデュースを手がける。2015年、〈平成26年度(第65回)芸術選奨文部科学大臣賞(大衆芸能部門)〉に選出される。2016年には、86年から続く“クリスマス・イブ”の30年連続オリコン週間シングルランキング100位入りという記録が、ギネス世界記録に認定された。2021年には自身のレギュラーラジオ番組「サンデー・ソングブック」が放送1,500回を迎えた。さらにCMタイアップ楽曲の制作や他アーティストへの楽曲提供など、幅広い活動を続けている。
