4年ぶりとなるセカンドアルバム『World Wide Pop』のリリース、そして〈FUJI ROCK FESTIVAL ’22〉への出演が話題のスーパーオーガニズムから、リードボーカルのオロノ、ギタリストのハリーがTOWER VINYL SHIBUYAに来店。自分たちの好きなレコードをピックアップしてもらった。
年齢、国籍、音楽背景も違うメンバーがネットを介して集まったスーパーオーガニズムは、デジタルネイティブの典型のような印象で見られることも多いかもしれないが、作品やライブに触れてみると、彼らを繋ぎ止めている本質にはとてもアナログで人間的なエモーションがあるとわかる。
そんなことを考えていると、店に着くなり店内を早速物色し始めたオロノとハリー。オロノは〈ブルース〉のコーナーで、B・B・キングや古いカントリーのレコードをしげしげと見ていたりする。いっぽう、ハリーは〈ブラジル〉のコーナーを見ながら、「そんなに詳しいわけじゃないけど、ブラジルのジョルジ・ベン(ベンジョール)とか、彼の周辺のミュージシャンたちの音楽が好きだし、アメリカ音楽の伝統の外側にある音楽をもっと探していきたい」と語る。
あれもいい、これもいいなの数十分。最後にはレコードショップではおなじみの光景である〈レコード裁判〉(どのレコードを買うべきか、並べてみて決める)が行われ、2人のセレクションが出揃った。では、順々に話を訊いていこう。
1. VA『The Essential Gospel Archives 1945-1958』by Orono
──ゴスペルブルースのオムニバス盤! いきなり、めちゃめちゃ渋いセレクトですね。
オロノ「ブルースのセクションで見つけました。ぜんぜん聴いたことないけど、こういうのはきっと内容もいいだろうと思って。
もし一番好きなジャンルを選ぶとしたらブルース、それも50年代や60年代のもの。アメリカのポップミュージックやロックの原点はブルースだし、現代の音楽でも自分が好きな音楽にはブルースを感じるんです。大好きなバンドのペイヴメントも、自分にとっては〈これ、ただのブルースミュージックじゃん〉と思って聴いてます。ハリーもブルースは好き?」
ハリー「大好きだね」
──この人たちの歌は半世紀以上前にレコーディングされたものですよね。オロノさんは当然その時代を生きてないわけだけど、どういうふうに知ったんですか?
オロノ「子どもの頃からブルースミュージックやそれ系の音楽を父親からよく聴かされてきたので、そこですごく好きになりました。父もB・B・キングとかが大好きなので。
この人たちは魂から歌っているんですよ。日本の音楽では、魂から歌ってるなと思えるような曲ってたまにしか聴かないような気がする。私はたぶん、そこ(魂からの歌)にすごく惹かれてるんだと思います」
2. Wings『Wings At The Speed Of Sound』by Harry
ハリー「つい最近、ポール・マッカートニーの80歳の誕生日(1942年6月18日生まれ)だったんだよ。だからポール・マッカートニー&ウイングスのアルバムを選んでみた。
ビートルズはティーンの頃から好きだったんだけど、ウイングスにはそんなに入れ込んでこなかったんだ。19歳の頃、薬局で働いてたんだけど、そこでウイングスの“Silly Love Songs”がよく流れてた。あれって彼の曲のなかでもいちばん甘くて安っぽい感じ(cheesy)だよね(笑)。でも、めぐりめぐってこの曲を僕は好きになった。今ではこの曲のセンチメンタルな感じが大好き。キャッチーでナイスな名曲を彼は書いて、みんなもそれを受け止めて楽しんだ。で、〈ちょっとくらいcheesyで何が悪いんだ〉とすら思ってるよ」
──このアルバム自体も、ポールのキャリアのなかでは正直言ってそんなに高い評価は受けてこなかったですよね。
ハリー「でも、他にもいい曲がいくつもある。“Let ’Em In”はアルバムの1曲目として最高。ベストソングをもう1曲選ぶなら“She’s My Baby”。ニュージーランドにいた頃からの親友が大好きな曲なんだ。よく知られた曲じゃないけど、ベースラインがすごくグルーヴィーなポップソングだよ」