ストリーミング再生回数を基準にするならば、この夏に世界でもっとも聴かれたアーティストこそプエルトリコ出身の大スター、バッド・バニーだ。この4作目はレゲトンを基調にメレンゲ、クンビア、マンボなどカリブの多様な音楽を取り込んで広くスペイン語圏にアピールしつつ、ボンバからEDMに転調する“El Apagón”、ハードなラテン・トラップ“Dos Mil 16”、ボッサ調やレゲエなどで変化をつけて全23曲を一気に聴かせる。ヴァラエティーは豊かで開放感があるが、どこかメランコリックなフィーリングが通底しており、時折切なげに聴こえる歌唱も〈君のいない夏〉という表題にぴったり。俳優業にも進出している彼は2024年公開のマーベル映画で主演を務めるとの報もあり、さらなる世界的人気を獲得するだろう。