(((さらうんど)))『After Hours』淡いサウンドスケープ、豊かなテクスチャ、みずみずしい歌――必然的な変化にこころ掴まれる7年ぶりの新作

2022.09.05

実に7年ぶりとなる(((さらうんど)))のフルアルバムは、昨年のシングル“Soap Opera”でのハウスミュージック路線を引き継ぎつつ、新たな展開を聴かせる一作。4つ打ちのビートを基調としながらも、ふわりとあらわれては消えていく淡いサウンドスケープ。だいたい2分前後、長くても3分にも満たないトラックには、繊細な展開と少しひねったアイデアが埋め込まれている。おかげで、ダンスフロアの香りを漂わせる一方で、ビートの快楽というよりは豊かなテクスチャの魅力にあふれる仕上がりになっている(ごりごりに踊りたい場合は、次いでリリースされたEP『After Life (Extended Version)』をどうぞ)。

ハウスを出発点にしながら近くて遠いどこかにたどり着いているという意味では、ハウストラックをつくったあとにエディット&ピッチダウンを施してユニークなサウンドをつくりだしたJun Kamoda『II』(2021年)、アンビエント的なアプローチをとりつつもダンスビートの遠い残響が時折顔をのぞかせるXTAL『Aburelu』(2020年)や、キックドラムなしのトランシーなハウストラックXTAL“A Leap”(2020年)といった各々の近作と連続性が感じられる。(((さらうんど)))としては意表をつくようなスタイルの変化も、ふたりの足跡をたどればある種の必然とさえ思えてくる。

しかしなによりも重要なのは、簡潔かつポエジーにあふれる英語詞(!)と、それを歌う鴨田潤の声だろう。そのシンプルさは、あふれんばかりのイメージや物語を饒舌に紡ぎ出すかつての(((さらうんど)))とは対極だ。ごつごつとした手触りの残る発音は、ボーカリストの身体を強く意識させる一方で、単語ひとつひとつが運ぶイメージを際立たせてもいる。歌が、身体と言葉のあいだで揺れているかのようだ。使い慣れた言語の外へ踏み出した『After Hours』は、不思議なほどにみずみずしい歌の魅力に満ちている。何重にも興味深く、こころを掴まれる作品だ。

 


RELEASE INFORMATION

リリース日:2022年8月10日
品番:KAKU-158

TRACKLIST
1. After Life
2. Magical Blink
3. Drive Me Crazy
4. A Wish
5. Tell Me
6. How
7. Can You Feel Me
8. Lost And Found
9. The Moment

Produced and Mixed by (((Sssurrounddd)))
Mastered by Jun Kamoda
Artwork and Lyrics by Jun Kamoda

 


PROFILE: (((さらうんど)))
鴨田潤(イルリメ)、Traks BoysのXTALとKenya Koarataによるポップスバンドとして活動を開始。2010年夏にシングル“サーマータイマー”をフリーダウンロードで配信し注目を集め、2012年にファーストアルバム『(((さらうんど)))』を発表。シーン、ジャンルを超えて多くの好評を得る。2013年7月にセカンドアルバム『New Age』、2015年にサードアルバム『See you, Blue』をリリース。2021年に6年ぶりとなるシングル“Soap Opera”を鴨田潤自身のレーベル、JUN RECORDSより発表し活動を再開(Kenya Koarataは脱退)。

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