私たちの日常の風景をすっかり変えてしまった、コロナ禍。それはまた、私たちの音楽の聴き方にも少なからず影響を及ぼしたと思います。以前好きだった音楽を受け付けなくなったり、あるいはそれまでスルーしていたような音楽に突如として心を奪われたり……。

そこでMikikiでは、ミュージシャンやレーベル関係者、レコード・ショップ関係者、ライブハウス関係者など音楽に関わって仕事をする人々に〈コロナ禍以降、愛聴している1曲〉を訊ねる新連載をスタート。その回答は一人ひとりのいまの心情を映し出すと同時に、災いに見舞われた人々に対して音楽がどのような意味を持つのか、そのヒントにもなるのではないでしょうか。 *Mikiki編集部

【アーティストと音楽関係者が選ぶ〈コロナ時代の1曲〉】記事一覧はこちら


 

XTAL

95年からDJを開始。川崎工場地帯の某工場屋上にて行われているインダストリアル・レイヴ・パーティー〈DK SOUND〉で、k404とのTraks BoysとしてレジデントDJを務める。バンド(((さらうんど)))、JINTANA & EMERALDSのメンバーとしても活動中。2020年5月にニュー・アルバム『Aburelu』をみずからのレーベル・Cizimaよりリリース。

 

コロナ禍以降、特に愛聴している1曲は何ですか?

Sounds Of Blackness “Hold On! (Change Is Comin’) (Blaze’s Klubhead Remix)”

Blaze

コロナ禍以降、最もよく聴いているのは間違いなくこの曲になる。正確に言うと、〈聴く〉ではなく〈踊る〉なのだが。個人的にコロナによって最も失われたのは、ダンスフロアで音楽を聴き、踊る機会である。もともとコロナ前もDJ休止期間中で、そろそろ活動再開しようというタイミングでコロナ、という流れだったので、ダンスフロアへの渇望は大きく、家で聴くのはもっぱらダンス・ミュージックが多くなった。

ゴスペル・グループSounds Of Blacknessの楽曲を、Blazeがリミックスしたこのヴァージョン、数えきれないぐらいの名曲・名リミックスを生み出しているBlazeワークスの中でも、個人的には最高峰の一つだと感じている。"Hold On! (Change Is Comin’)"というタイトル通り、苦境に置かれても変化はいつかは必ず訪れる、希望を失うなと鼓舞するこの曲を、Blazeはイントロと中盤にスローなビート・ダウン・パートを配置し、他の部分は力強いハウス・ビート(このビートの変化は勿論サブタイトル〈Change Is Comin’〉にもかかっているはず)を使用する、という劇的な構成でリミックスしている。

実はこの曲、自分以外のDJがプレイしているのを聴いたことがない。そして、2021年3月現在この曲はストリーミングでもYouTubeでも聴くことが出来ない。ぜひいつかのダンスフロアで私がプレイする際に、聴きに来てほしいと思う。

 


RELEASE INFORMATION

リリース日:2020年5月29日
フォーマット:10インチ・アナログ盤/デジタル
配信リンク:https://linkco.re/vedHMS3D?lang=ja

TRACKLIST
1. Hare
2. Tasobi
3. Kakela
4. Yuran
5. Hakumei
6. Mashiro
7. Ma-I-Ya
8. Sei So
9. Aburelu
10. Yorube