Photo by Toshiaki Kitaoka

桑原あい ザ・プロジェクトが繰り広げた白熱の演奏を収めたライヴ・アルバム

 2012年のデビュー以来、スティーヴ・ガッド&ウィル・リーとの共演やソロ・ピアノ演奏など多彩な活動を展開する桑原あい。彼女がデビュー10周年に発表したアルバム『MAKING US ALIVE』は、2017年に鳥越啓介(ベース)&千住宗臣(ドラムス)とともに結成した〈桑原あい ザ・プロジェクト〉によるもの。今年4月~7月に開催されたRecording Tour 2022 “Live Takes”のベスト・テイクを収録したライヴ・アルバムだ。

桑原あい ザ・プロジェクト 『Making Us Alive』 Verve/ユニバーサル(2022)

 「デビュー後しばらくスランプの時期があったのですが、5年くらい前に抜け出して、自分自身の音楽の可能性を広げたくて結成したのが、このトリオです。鳥越さんは、私が中学生の時に観た東京JAZZのステージが忘れられなくて、それ以来いつか共演したいと思い続けていたベーシスト。千住さんに入っていただいたのは、彼のグルーヴ感が大好きで、あのグルーヴで踊ってみたい(笑)と思ったのがきっかけです。今回の作品をザ・プロジェクトのライヴ作にしたのにはいくつか理由があるのですが、早くこの3人だけのアルバムを作りたかったというのが一番の理由。実はこれまでトリオ単独のものがなかったんです。ライヴ録音を選んだのは、このトリオの魅力を最大限に出したかったから。これまでずっと一緒にやってきて思うのは、このバンドが猛烈なライヴ・バンドだということ。爆発力がものすごいんです。ライヴにはリスクも伴いますけど、このトリオがハプニングしていく様子を聴いていただくのはライヴが一番だろうと」

 確かに、3人のインタープレイがスモーキーな雰囲気を漂わせる“マネー・ジャングル”や、浮遊感や疾走感、強靭なグルーヴ感が多角的に交錯する“クール”など、聴く者をライヴ独特のサプライズ空間に誘う演奏が数多く収録されているが、それと同時に印象的なのは、“ペイル・ブルー・アイズ”“青春の光と影”で聴かれる静謐でピュアなピアノ表現だ。

 「私はジョニ・ミッチェルの大ファンで、中でも“青春の光と影”は、歌詞もぜんぶ覚えているくらい大好きな曲。でもこれまで曲の世界観を掴みきることができず、演奏することに躊躇いがありました。それが今回のツアー中にふっと私のもとに降りてきたんです。これまで生きてきた積み重ねの中で、歌詞のひとつひとつの意味が目に見えたような不思議な経験でした。今なら弾けると確信できてのチャレンジです。作品全体にライヴならではの驚きや奇跡が詰まったアルバムになっています」

 


LIVE INFORMATION
ヨコスカ ジャズ ドリームス ライブシリーズ2022
2022年11月5日(土)神奈川 横須賀芸術劇場

桑原あいソロピアノライブ「LIVE TAKES Solo Piano」
2022年11月9日(水)大阪・西梅田 ミスターケリーズ