ドラム石若駿とのデュオ作 清々しい音楽から覗く二面性も煌めきの要素
ピアニストの桑原あいとドラマーの石若駿。日本のジャズの未来を担う若手二人によるデュオ作『ディア・ファミリー』は、実にフレッシュでメロディアスな作品だ。制作の発端は、テレビ朝日系の報道番組〈サタデーステーション〉〈サンデーステーション〉のテーマ曲を書いたこと。そこから表題曲“ディア・ファミリー”が生まれ、アルバムに発展したという。
「番組の絵コンテを見せてもらって曲の構想を膨らませました。土日の夜9時からの番組だから、家族に見てもらえる報道番組にしたいってスタッフの方に言われて、そこから“ファミリー・ツリー”とか“グランパズ・サングラス”とか、家族にまつわる曲名がキーワードとして浮かびましたね」
これまでピアノ・トリオというフォーマットにこだわってきた桑原だが、本作は石若とのデュオだ。
「ピアノ・トリオへの憧れは死ぬまであると思います。ただ、今回の編成はなんでもいいですって言われて、トリオでやるともったないって思ったんです。(石若)駿君って、ドラマーひとりでオーケストラを作ってしまうようなすごさがあって、そんな彼と対等な立場でやれたら面白いだろうと。ただ、ピアノ・トリオだとベーシストがピアノとドラムの架け橋になってくれるけど、それがいないのでグルーヴが少しでも噛み合わないとごちゃごちゃになるんですね。だから、ふたりでアンサンブルが成り立つように、左手でしっかりベースを鳴らして。そこは意地で頑張りました」
中学生の時に日野皓正のバンドに抜擢され、東京芸大の打楽器科を首席で卒業した石若は、年間300本ものライヴをこなす、今最注目のドラマー。そんな彼は作曲家としても優れている。
「駿君が作ってくる曲って暗かったりおしとやかな曲が多いんですよね。でも駿君自身は私とは反対で陽な人間だと思う。私は割と内にこもりがちな人間なんですけど、駿君は根本的に明るい。でも、インサイドな曲を書いてくる。その二面性っていうか、曲と性格のアンバランスさがもしかして彼の中でいいバランスになっているのかなって思いますね」
昨今は鳥越啓介(b)、千住宗臣(ds)とのトリオで活動を開始したという桑原。こちらも今後が楽しみだ。
「ジャズ畑じゃない人とやりたいなと思って、以前から憧れていたふたりにお願いしました。このトリオは9月27がお披露目ライヴで、これまで3回ライヴやったんですけど、全部すごいよくて。ふたりとも音がデカくてめちゃめちゃ暑苦しいので(笑)、いちいち音の説得力がすごくて、シビれながらやってますよ。ピアノも鳴らしがいがありますね」
LIVE INFORMATION
Ai Kuwabara Shinjuku Pit inn Christmas Special
○12/23(土)20:00開演 会場:新宿ピットイン
1st set ものんくるサイド 桑原あい×ものんくる
(桑原あい(p)吉田沙良(vo)角田隆太(b) )
2nd set ピアノトリオサイド 桑原あい ザ・プロジェクト
(桑原あい(p)須川崇志(b)千住宗臣(ds)) DJ:桑原あい
velvetsun presents Futurama I
○1/15(月)19:00開演 会場:渋谷www
出演:ai kuwabara the project/スガダイロートリオ/世武裕子 spécifiqueトリオ/DJ:yurei+abelest