カンヌ史上もっとも異質なパルムドール受賞作品と言える強烈で衝撃的な傑作の誕生。進化なのか変容なのか身体変化をテーマにすることが多いデュクルノー監督。本作は事故によって頭にチタンを埋め、車に異常な愛着を示す連続殺人鬼の女と、息子が行方不明になり喪失感と消防士のキャプテンとして威厳を保ためにステロイド注射を繰り返す男の異形の愛の物語。身体の変化と痛みは表裏一体なのだろうか。死体になるにも肉体の維持や進化にも新たな生命の誕生にも痛みは伴い、愛が寄り添う時もあるのだろう。それにしても主人公が殺人を犯した後にキャデラックと性行為ってほんとんど黒魔術の儀式のようだ。