自分の人格は本当に自分自身なのだろうか? 自分の意志で自分は行動しているのだろうか? ブランドン・クローネンバーグ監督が哲学的な問いと人格の揺らめきを血みどろのバイオレンスとサイバーパンク的な要素を織り混ぜ現代社会のパラレルワールドな未来を示唆したような作品に作り上げた。殺人を請け負う企業に勤務する主人公が特殊なデバイスを使用して他人の人格を乗っ取るのだが、しだいに二つの精神が融合していき……。この暗殺業務の過程が非常に興味深い。乗っ取った人格で自殺することによって元に戻れ、その後に自分自身の人格の再構成をする。人格の再構成の作業はラストへの布石ともなっている。