思いが詰まった場所でのソロでの公演、今の素の自分を伝えたい
一からジャズを学ぶため、大江千里がニューヨークに渡って15年もの月日がたつ。彼はロバート・グラスパーやホセ・ジェイムズらも学んザ・ニュー・スクール大に通い、卒業後もそのまま同地を拠点にジャズ・ピアニストとしてアルバム制作やライヴ活動を行っている。
「僕がアメリカで生き残っていくための強みを持っているとすればなんだろうと考えたときに、やはりずっと描き続けてきたメロディがあると思うんです。僕のソングブックというようなイメージで、ジャズという世界観の中いかに千里スタンダードソングを書いて演奏していくか。これは大きなチャレンジですけどやりがいがあります」
アメリカで挑戦を続ける大江はコロナ禍を経て、この夏から日本での活動も再開した。新年には兵庫県芦屋市のルネサンスクラシックス芦屋ルナ・ホールで、〈大江千里 Piano Concert ~Remember Homeroom!~〉という公演を行う。
「このホールは最初の大学生だった関西学院の1年生の時に、軽音の先輩のバンドに混ぜてもらって出たことがある思い出深いホールなんです。その時はい怖もの知らずで、マーヴィン・ゲイの“ホワッツ・ゴーイン・オン”なんかを歌いましたね。それがたくさんのお客さんの前でカタルシスを覚えた、初めての経験でした」
2022年、彼はデビュー40周年を迎えた。
「ずっとアマチュアのような感覚がどこかにあるまま音楽のプロとして40年という月日をやってきて、そして40周年のアニバーサリーの年の初めに思いの詰まった場所に戻ってピアノを演奏できるということにとても感慨とご縁を感じますね」
2018年に発表した『Boys & Girls』は、彼の人気シンガー・ソングライター時代の好曲をジャズ・アーティストとしてピアノひとつで紐解き直したアルバムだった。ソロ・パフォーマンスによる芦屋ルナ・ホールにおける公演では、かつてのポップ期の楽曲も現在の彼のスタンスで披露される。大江にとって、ソロ・ピアノという形態は自分のなかでどんな位置にあるのだろう。
「アメリカではソロで回る場所も多いんですが、やはり一人の利点は思いっきり自由にキャンヴァスに絵がかけるというのがあります。抽象画からキャッチーなものまで、ジャンルを跨いでオーケストラからささやくようなピアニシモまで。ソロでやるというのは頭で聞こえてくる全部の楽器をやらなきゃいけないという大変な部分もたくさんあります。でも、その場でお客さんから帰ってくる球を直ぐに投げ返せますよね。変幻自在、筋書きがあってないような、これは楽しい!」
そして、彼は抱負をこうも続けた。
「大変な時代だけど僕が奏でるピアノの音を通して、ポップもジャズも全部巻き込んで出来上がった〈千里ジャズ〉というような新たな音楽の体験をみんなに共有してもらいたい。理屈なしに帰り道に鼻歌を歌って寄り道がしたくなるような、よし、もうちょっと頑張るかって思ってもらえるようそんな気持ちにしたいです」
そこには今の裸の大江千里が現れますかと問いかけると、「素顔のその日のありのままの大江千里、かな」と彼は微笑んだ。
大江千里(Senri Ooe)
1960年生まれ。1983年にシンガーソングライターとしてデビュー。
“十人十色”“格好悪いふられ方”“Rain”“ありがとう”などヒット曲が多数。アルバム“APOLLO”でオリコン1位を獲得。渡辺美里“10 Years”“すき”、松田聖子“Pearl-White Eve”、光GENJI“太陽がいっぱい”などの提供曲でも知られる。2008年、ジャズピアニストを目指し渡米、NYのThe School Of Jazz And Contemporary Musicに入学。2012年、大学卒業と同時に自身のレーベル〈PND Records〉を設立。同年、1stアルバム『boys mature slow』でジャズピアニストとしてデビュー。2015年、渡米からジャズ留学、大学卒業までを記した著書「9番目の音を探して」(KADOKAWA)を発表。2016年夏、初のジャズヴォーカルアルバム『answer july』を発売。アトランタジャズフェステイバル、デトロイトジャズフェステイバル、アルバニアジャズフェスティバルなどにソロピアニストとして参加。2018年には、デビュー35周年記念として『Boys & Girls』を発売。2019年に『Hmmm』をAri Hoenig(ドラムス)、 Matt Clohesy(ベース)とのトリオで制作。このアルバムが全米ジャズラジオ局のオンエアチャートを示す〈Jazz Week〉で39位(2020年3月9日付)を記録。2022年6月、全米一の音楽フェステイバル〈SummerFest 2022〉にトリオで参加。2022年11月、初のレシピ本「ブルックリンでソロめし!」(KADOKAWA)を発売。40周年記念アルバムを来春発売予定。
LIVE INFORMATION
RENAISSANCE CLASSICS
40th Anniversary Celebration
「大江千里 Piano Concert ~Remember Homeroom!~」
2023年1月7日(土)兵庫・芦屋 ルネサンスクラシックス芦屋ルナ・ホール(大ホール)
開場/開演:18:00/18:30
出演:大江千里
演奏曲:最新ジャズピアノ作品、“Rain”“格好悪いふられ方”等の代表曲をセルフカバーしたピアノ作品から選曲
料金:5,500円(全席指定・税込)
ペアーチケット(2枚):10,000円(全席指定・税込)
一般発売2022年12月10日(土)AM10:00~
ローソンチケット:Lコード:52644/https://l-tike.com/senrioe-rc/
e+(イープラス):https://eplus.jp/rc-os/
チケットぴあ:Pコード:232-052/https://w.pia.jp/t/renaissance-40th/
主催・企画制作:RENAISSANCE CLASSICS
後援:神戸新聞社/FMCOCOLO(芦屋)/FM愛知(名古屋)
お問い合せ(YUMEBANCHI(大阪)):06-6341-3525(平日12:00~17:00)
https://classics-festival.com/rc/performance/40th_senri-oe/