離婚後、故郷に帰ってきた40歳の朝子が、学生時代、夢中になったトロンボーンに、再び打ち込んでいく。エイジズム、セクシズムなど偏見に基づいた周囲からの声が、やけにリアルでいながらも、登場人物が暖かなタッチで描かれていることや、コミカルな描写も多く、不思議と重過ぎない爽やかな読後感に。フラットに好きに打ち込んでいく、真っすぐな朝子の姿に励まされる。特に辛辣に言葉を投げかける青年・千尋もまた、自らの思い込みによる枷があったことが少しずつ垣間見えてくる。今後の展開が非常に気になるラストの高揚感! 「うん でも……楽しいよ」そう、何者にもなれなくても、音楽は楽しい。