Page 4 / 5 1ページ目から読む

村越辰哉(新宿店)

古内東子 『体温、鼓動』 ALDELIGHT/Sony Music Direct(2022)

古内東子デビュー30周年記念プロジェクト第1弾。ALDELIGHTレーベルからのオリジナルニューアルバム。曲毎に異なる6人のピアニスト(中西康晴、森 俊之、草間信一、河野 伸、松本圭司、井上 薫)と強力なリズム隊(ベース:小松秀行、ドラムス:Tomo Kanno)を擁したサウンド。シンプルな楽器編成で鳴っている音はリッチ。歌とピアノのミックスが対等なのも過去作にはないバランス……なのかな、きっと。

というのも過去作を引き合いに出すほど古内さんの音楽ついて詳しいわけではなく。というのも古内さんのことは90年代はラグジュアリー&女性の恋愛模様的世界観から近寄りがたいイメージを勝手に持っておりスルーしておりまして、以降、何回かの周年記念盤が出るたびに少しずつ耳にして、もう絶対いいことはわかっていたのですが……スミマセン、長きにわたる潜伏期間を経て、この30周年記念アルバムで晴れて入門した次第。

シティポップブームが90年代~2000年代のJ-Popに及んでいる流れでの古内さんの再評価は高まっているわけでありますが、この最新作はシティポップというサウンドではなく、シンガーソングライターとしての核の部分をピアノメインのバンドサウンドで表現しておりまして、研ぎ澄まされた楽曲とパフォーマンス、揺るぎないその世界に没入してしまいますね。

全8曲34分50秒、このタイトさが逆に贅沢ってもんです。アナログで聴くのはもう贅沢の極みです。

 

中本颯一郎(新宿店)

LOS BITCHOS 『Let The Festivities Begin!』 City Slang(2022)

シャッグス的イモキュートなジャケと安直なバンド名、〈パーティーの始まりよ!〉ってなアルバムタイトルに僕のキワモノセンサーがビビビと反応し、即チェック。ガールズガレージものかと思いきや、なんとインストバンド!? 往年のサーフロックに中東サイケ、クンビアにマンダリンガレージをチャンポンで飲み干し千鳥足で酩酊する安っぽい極上のグルーヴ、リバーブの効いたギターによるちょいダサでキャッチーなメロディーに電流が走り、一聴き惚れしてしまいました。同じ畑のクルアンビンのようなある種クールで知的な感じとはまた違う、いい意味でのチープさ、B級感が限りなく愛おしく、それでいて演奏自体はとてもしっかりしているのにグッときます。ジャケも音も含めて、このレトロな感じはアナログ盤で美味しさ倍増です。あとで調べたらプロデュースはなんとフランツ・フェルディナンドのアレックス・カプラノスでした。

 

具嶋美保子(福岡パルコ店)

奇妙礼太郎 『GOLDEN TIME』 Grand Gallery(2022)

奇妙礼太郎のファーストアルバムがレコード化! 2011年リリースのCDはもちろん買いましたが、名曲“きみが誰かの彼女になりくさっても”はアナログの方が何倍もグッと来る。哀愁が半端ないです。奇妙礼太郎のオールディーズ感とアナログとの相性が良すぎます。 

 

寺本将巳(福岡パルコ店)

柴田聡子 『雑感/雑感(KID FRESINO Remix)』 AWDR/LR2(2022)

毎年、この時期になったら一年あっという間に過ぎたなと思うのですが、振り返るとアルバム、シングル、良いものが沢山ありました。今年は一つの曲を聴き込むことが多かったように感じます。気持ちを昂らせてくれる曲、リラックスさせてくれる曲、唯々良い曲、色々と素敵な曲に出会いましたが、一曲選びました。

5月にリリースされた柴田聡子『ぼちぼち銀河』は素晴らしい内容のアルバムでしたが、その中でも特に聴き込んだ“雑感”は2022年マイベストソングになりました。7インチには大胆にリミックスされた“KID FRESINO Remix”を収録。今年、目まぐるしく過ぎる日々のまとまりのない考えと気持ちの中、焦る落ち着きのない自分を冷静に落ち着かせてくれる一曲でした。

 

福島輝之(福岡パルコ店)

RED HOT CHILI PEPPERS 『Californication』 Warner Bros.(2022)

2022年は新作を連続リリース、もう何度目かわからない黄金期に突入したレッチリの〈世界最強〉伝説の幕開けを告げた99年作。強靭なファンクネスとパンクロックのメンタリティーに加え、酸いも甘いもかみ分けた哀愁まで手に入れた楽曲が並ぶ本編内容もさることながら、ディスク4面の、ライブ前に円陣(ソウルサークル)を組む4人の背中に来し方行く末の物語がにじみ出ているピクチャーに思わず胸アツ&ジャケ買い。