
「ダブのサウンド世界を探求することに夢中になったんだ」――2部構成大作アルバムをリリース
エズラ・コレクティヴの活動でも知られるキーボード奏者のジョー・アーモン・ジョーンズのソロ・アルバム。2部構成のアルバムで今作は先にリリースとなった1作目。クラブ寄りのサウンドにフォーカスしていたマックスウェル・オウィンとの『Archetype』とも、前作のソロである『Turn To Clear View』とも異なる感触がある。ジャズを基盤に多様な音楽を採り入れた音楽性が大きく変わったわけではないのだが、楽曲の完成度が高く、音響面でも豊かな鳴りを実現している。4日間の集中的なレコーディングから作られたそうだが、ダイナミズムがあるだけではなく、繊細なサウンド・デザインも感じられる。

その背景には、ロックダウンの期間中にインスパイアを受けて探求したというキング・タビーのダブのプロダクションや、ロンドンのルイシャムにあるユニット137というサウンドシステム・チームから得たものがある。オープン・リール・デッキやスプリング・リヴァーブを備えたスタジオを構築したということからも本気度が伺える。プレイヤーとしてダイレクトな演奏をパッケージングするのではなく、プロデューサーとして(今作ではミックスもジョーンズが担当)全体のトリートメントに気を配っている。特にドラムとベースの音は終始柔らかく、ダブ的な残響も加えながら包み込むように響いていて、アルバムに統一感をもたらしている。
ヌバイア・ガルシアやエズラ・コレクティヴのジェームス・ モリソンら、おなじみのメンバーが脇を固めているが、その演奏も含めて全体をもう一段高いレヴェルに引き上げているのは間違いなくプロダクションの力だ。ガルシアの『Odyssey』は作曲家としての才能を示すアルバムに仕上がっていたが、『All The Quiet (Part 1)』もプレイヤーとしてだけではないプロデューサーとしての実力を示している。Part 2も期待したい。