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既報のとおり、ジェフ・ベックが死去した。最期まで現役を貫いていただけに、全世界のロックファンやギターファンは驚き、悲しんでいる。その独創的かつ情感豊かなプレイスタイルや進取の気性には、多くの後進ギタリストたちが憧れ、影響されてきた。訃報に触れてから、彼が遺した名演の数々を懐かしんでいる者も多いだろう。今回は彼を追悼して、ギターに造詣が深い音楽ライターの近藤正義にその功績を振り返ってもらった。 *Mikiki編集部


 

ヤードバーズ、ジェフ・ベック・グループ、ベック・ボガート&アピス

エレクトリックギターの巨星、ジェフ・ベックが1月10日に亡くなった。享年78。年齢を感じさせない精力的なツアーを繰り返していたジェフ・ベック 。昨年の夏にジョニー・デップとのニューアルバム『18』を発表したばかりで、11月までツアーも行なっていた。さらに、今年は2017年以来6年ぶりの来日コンサートも予定されていたという。それだけに突然の訃報は残念でならない。

ジェフ・ベックは1944年6月24日、英国サリー州ウォリントンで誕生。65年にエリック・クラプトンの後任としてヤードバーズに加入し、斬新なギターサウンドでロック界に新風を吹き込んだ。67年にはロッド・スチュワート、ロン・ウッドをメンバーにジェフ・ベック・グループを結成してヘビーなブルースロックを、さらに71年には第2期ジェフ・ベック・グループで時代を先取りしたソウルテイストなロックを聴かせた。

73年に結成したベック・ボガート&アピスでトリオ編成のハードロックを極めた後、75年よりインストゥルメンタルを中心としたソロ活動を展開。ヤン・ハマー、マックス・ミドルトン、スタンリー・クラーク、ナラダ・マイケル・ウォルデン、テリー・ボジオ、トニー・ハイマス、ジェニファー・バトゥン、タル・ウィルケンフェルド、ロンダ・スミスなど多くの実力派メンバーをバンドに迎えながらギターシーンを牽引した。

これまでに米国グラミー賞を8回、ロックの殿堂にはヤードバーズのメンバーとして、またソロとしての2回選ばれている。

 

エレキギターの可能性を広げた新鮮なプレイ

ジェフ・ベックのプレイを一言で表すなら、瞬間を捉えて閃光を放つギター。ベーシックな部分にはしっかりとブルースが存在するのだが、ギタリスト、レス・ポールやクリフ・ギャラップの影響をはじめ様々なジャンルの要素を内包する彼のギターは予測がつかないほどトリッキー。故に、彼のプレイはいつも新鮮だった。

彼のギターシーンに残した功績は、エレクトリックギターの可能性を広げたこと。この点に関しては、ジミ・ヘンドリックスの試みをさらに推し進めたと言ってよいだろう。

 

“ハートせつなく”から“悲しみの恋人逹”、ジョニー・デップとの共演まで57年間の名演

それでは、約57年に及ぶ彼のキャリアの中から、いくつかの名演を振り返ってみたい。

60年代は、ヤードバーズ時代の“ハートせつなく”(65年)でスティールな音色のソロを、第1期ジェフ・ベック・グループの“Shapes Of Things”(66年)ではブルースを下地にしたニューロックを展開。

ヤードバーズの65年のシングル“Heart Full Of Soul”

68年作『Truth』収録曲“Shapes Of Things”

70年代には第2期ジェフ・ベック ・グループ“Got The Feeling”(71年)でニューソウル的なロックを、ベック・ボガート&アピスではスティーヴィー・ワンダーの曲“迷信”(73年)をヘビーなアレンジでヒットさせた。ソロになってからは美しいバラード“悲しみの恋人逹”(75年)、ハードフュージョンの“Led Boots”(76年)が印象的。

71年作『Rough And Ready』収録曲“Got The Feeling”

ベック・ボガート&アピスの73年作『Beck, Bogert & Appice』収録曲“Superstition(迷信)”

75年作『Blow By Blow』収録曲“Cause We’ve Ended As Lovers(悲しみの恋人逹)”

76年作『Wired』収録曲“Led Boots”

80年代にはシンセのシークエンスを使った“Star Cycle”(80年)、久々にロッド・スチュワートと共演した“People Get Ready”(85年)、アームやハーモニクスで音程を作る離れ技を確立した“Where Were You”(89年)など。

80年作『There And Back』収録曲“Star Cycle”

85年作『Flash』収録曲“People Get Ready”

89年作『Jeff Beck’s Guitar Shop』収録曲“Where Were You”

その他にも中近東の曲をカバーした(2001年)、ライブで定番となった70年代クロスオーバー曲“Stratus”、美しいメロディーをベック流に料理したスタンダード“Over The Rainbow”(2010年)、最新アルバムからはマーヴィン・ゲイのカバー“What’s Going On”(2022年)など、誰もが認める名曲/名演は数多くある。

2008年のライブアルバム『Performing This Week... Live At Ronnie Scott’s』収録曲“Stratus”

2010年作『Emotion & Commotion』収録曲“Over The Rainbow”

ジェフ・ベック&ジョニー・デップの2022年作『18』収録曲“What’s Going On”

 

ジェフ・ベックの名は永遠に刻まれる

ジェフ・ベックは60代になっても、70代になっても現在進行形で勝負するプレイヤーとしてアグレッシブな姿勢を貫き、まだまだ伝説のギタリストに納まる気はなさそうだった。

また、台頭する若手ギタリストのハイテクニック指向やデジタル化するレコーディング技術の中において、ベテランの域に突入した彼がどのような形で存在意義を示すのか……こういったファンの杞憂を見事に払拭してくれた。古くからのファンとしては、それらが頼もしかった。往年のスタイルで再評価され、どんどん渋みを増していくギタリストは多い。しかし、ジェフ・ベックはまったく新しいオリジナルなスタイルで変化/進化を続けていった。

ジェフ・ベック――彼の名はギターミュージックシーンに永遠に刻み込まれる。

我々は彼の名を忘れることはないだろう。