創造性に富んだ奏法とテクニックによって革命的な名盤を残してきた不世出のギター殺人者。輝かしいエピック時代の歩みを集大成した日本独自ベストを契機に、その楽曲自体の魅力に改めて触れてみよう!

 ジェフ・ベック突然の訃報から早2年。もし生きていたら80歳になっているんだな。彼が思い描いていた80代の活動とはいったいどんなものだったのだろう? もうじきその齢を迎える盟友エリック・クラプトンの来日ツアーを目前に控え、深い感慨に打たれている今日この頃であるが、一方でベック本人が残した音楽さながらにガツンとくるインパクトをもたらしてくれるのが、このたび日本のみの独自企画盤としてリリースされたベスト・アルバム『The Best Of Jeff Beck Epic Years 1971-2003』だ。彼の死後に登場したタイトルとしては、レインボー・シアターでの未発表ライヴを追加したボックスセット『Live In Japan 1973, Live In London 1974』があったものの、長いキャリアを改めて顧みる作品となるとこれが初。コアなリスナーの喪失感を埋める役割を担うと同時に、いままさにベック道の入り口に立とうとしている新参者にとってこのうえなく実用性の高い手引書になり得るヴォリューム感もまた嬉しいところだ。

JEFF BECK 『ザ・ベスト・オブ・ジェフ・ベック エピック・イヤーズ 1971-2003』 ソニー(2025)

 この2枚組が辿るのは71年から2003年まで、この偉大なロック・ギタリストが辿った約40年間の歴史だ。その間に在籍したエピックでの13枚のアルバムからセレクトされた納得のトラックが揃っているが、時系列に沿って活動の変遷を追っていくので、氏の実像に迫るのにもってこいな内容と言える。