あまりにも偉大なギタリストにして永遠のギター・ヒーロー。すでに多くの名演で知られる神の功績を、それぞれの時代ごとの魅力的な楽曲から改めてじっくり捉え直してみよう!

 〈ギタリストは2種類しかいない。ジェフ・ベックと、それ以外だ〉――誰が言ったか知らないが、そんな哲学的な言い回しがよく似合うあたりも孤高の天才ギタリストたる所以だろう。不世出のミュージシャンとして世界中に数多くのフォロワーを生み、数多くのリスナーから敬意を集めてきたジェフ・ベック。2023年1月10日にこの世を去ってからも、かけがえのない存在感は膨大な名演と共に鮮やかに刻まれたままだ。そんな逝去から2年が経ち、かの名盤『Blow By Blow』から50周年を迎えるこの2025年のタイミングにあって、今回はおよそ40年間にわたって在籍したエピック時代(71~2003年)のカタログから名曲・名演を選りすぐった初の日本独自企画ベスト盤『The Best Of Jeff Beck Epic Years 1971-2003』が高品質BSCD2の2枚組でコンパイルされた。

JEFF BECK 『ザ・ベスト・オブ・ジェフ・ベック エピック・イヤーズ 1971-2003』 ソニー(2025)

 比較するようなものでもないが、同じヤードバーズを出自とするエリック・クラプトン、ジミー・ペイジと並んで〈世界の3大ギタリスト〉の一角を成しつつも、より大衆的なヒットを数多く生んで商業的にも成功したクラプトン、レッド・ツェッペリンで天下を獲ったペイジに比べれば、職人的なイメージの強さもあってベックの功績は門外漢からはわかりにくいものに思われてきたかもしれない。それだけに、残された楽曲単位でその実績を追いかける今回のベスト盤は、プレイの凄さやテクニック的な面への評価とはまた違った、音源そのもののフラットな魅力からジェフ・ベックというアーティストを楽しみ直すためのきっかけになることだろう。