譲れない/譲らない想いを並べて〈今日〉を讃える
Travel TV & Lush Music presents
ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World- 2023

 元安川橋から平和大橋まで。川べりの桜を愛でてから、バス停で一つ先の広島文化学園HBGホールへと向かった。腕の時計が4月1日17時30分を告げる。〈ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World- 2023〉の初日。大自然の映像と「初公開のインスト」が流れる中、ASKA BANDの8名と主役が登場し、大歓声下での1曲目が“Trip”!! 新旧の恋の境界線越えを描いた歌詞〈そこからは/入れ替わる/シルエット〉の部分が、開幕の奮えや新年度の想い、マスク解放や人事の季節感とどこか重なる駆け出しだ。2曲目が新世界への踏出しを押す“自分じゃないか”、次いで〈青空はいつも丈夫だ〉と謳う“地球という名の都”へ。澤野弘之:作曲、最新型ASKAの表現力が光るコラボ話題作だ。ただ音楽に身を任せていても彼の導きが自然と染みてくる。TALKの第一声は「コンバンワ! やっと自由になれたよね、俺たち、頑張ったもんね」と、人柄が如実に伝わるものだった。

 次の曲が始まる。前曲からの乗り継ぎ方が絶妙だ。目覚めのベッドから下り、食卓へと向かう至福感を月面着陸の宇宙飛行士に喩えた名曲“こんなふうに”。エンジンを乗せ換えてI am GENKIと鼓舞する“憲兵と王様も居ない城”。やせる歌を戒めながらSOULの潤いを讃える“LOVE SONG”と、6曲を歌い終えて彼は語った。「いろいろな取材で〈次はASKAロックで行きますよ〉と語ってきたけれども、実際に並べてみたらそうでもないんだよね」と笑みを浮かべ、「ポップスでもロックを超えているものは幾らでもあると思ってるから。いろいろと曲を並べていったら、今回の曲順・選曲になりました。僕の持ち味はあくまでもポップスだと思っているから、そんな感覚で今日は一日過ごしてください」。延期に次ぐ延期のツアー初日を「この広島で迎えられる」歓びを繰り返していた。

 7曲目は“どうしたの?”。難題が溢れる世間下で大事なものと大切な人を〈守れてる〉気持ち、何もない部屋で〈試されているみたい〉と想いながら、日常の充実感を描いた2020年の作品。各楽曲の制作年は一々触れないが、それぞれの時代の・様々な季節の・折々の感情や情景を編んできた歌詞群を、コロナ禍の現下で俯瞰しても見事着地してしまう不思議さ。ASKA自身の選曲の妙もさることながら、やはり抜きん出た比喩力の成せる技――奔放で美しい旋律を支える楽器やアレンジの進化も加味しつつ、自在な詩そのものが聴き手の解釈の反芻を得、奇跡的な経年変化で輝きを増しつづけているからに他ならないだろう。

 その象徴的傑作“はじまりはいつも雨”がこの日の10曲目。会場を埋めた人々の大半がおそらく昨夜、遠足前夜よろしく〈空を見てた〉のは想像に難くない。次の“しゃぼん”で心を守る景色はあるか/傍らに歌はあるかと優しく問い、それは〈きらきらしてるかい〉と今宵の再会を謳うASKA。サプライズで先月の、デイヴィッド・フォスターとの共演曲“You Raise Me Up”も披露した。腕についた光のリボンの至福性を活写した近年の秀作“僕のwonderful world”がそれを受ける。話は前後したが、当日の彼はシアン系の上衣(こそ纏って現われたが早々に脱ぎ捨てた)の下は、黒のTシャツ&ジーンズ姿でライブを貫いた。「ステージで光モノを着るのに飽きちゃって(笑)、もうTシャツで行こうかと……なんか……リハーサルみたいな感じでいいでしょう」と、その理由を明かしていた。なにげない日常の細部(に宿る光や希望や諸事…)を具に描いてきた作品群を、かけがえのない愛の部品のように並べ直しての2時間強。〈涙流す人たち〉と距離を越え、幸せを感じあえたらいいねと呼びかけた“東京”。そして“太陽と埃の中で”!! いつだって風邪をひきつつもオイル切れの“未来のプログラム”を大事に回し、名前も国もない〈生まれたての元気〉を尊ぶ精神力。気がつけば“モーニングムーン”に突入していて……あっという間の全21曲(+“PRIDE”)の2時間強が熱風のように過ぎて行った。今回のツアー、各地で凄い反響を呼びそうだ。

 


LIVE INFORMATION
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ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World- 2023

2023年4月22日(土)オリックス劇場
開場/開演:16:00/17:00
2023年4月23日(日)オリックス劇場
開場/開演:14:00/15:00
2023年4月30日(日)けんしん郡山文化センター 大ホール
開場/開演:16:30/17:30
2023年5月7日(日)森のホール21(松戸)
開場/開演:16:00/17:00
2023年5月14日(日)熊本城ホール メインホール
開場/開演:16:00開場/17:00開演
2023年5月20日(土)トークネットホール仙台 大ホール
開場/開演:16:00/17:00
2023年5月25日(木)東京国際フォーラム ホールA
開場/開演:18:00/19:00
2023年7月1日(土)那覇文化芸術劇場なはーと 大劇場
開場/開演:17:00/18:00
2023年7月4日(火)神奈川県民ホール
開場/開演:18:00/19:00
2023年7月7日(金)神戸国際会館 こくさいホール
開場/開演:18:00/19:00
2023年7月9日(日)なら100年会館 大ホール
開場/開演:16:00/17:00
2023年7月21日(金)札幌文化芸術劇場 hitaru
開場/開演:18:00/19:00
2023年7月28(金)福岡サンパレスホテル&ホール
開場/開演:17:30/18:30
2023年8月4日(金)東京国際フォーラム ホールA
開場/開演:18:00/19:00

出演:ASKA/ASKAバンド:澤近泰輔(ピアノ/編曲)/佐藤邦治(ドラムス)/鈴川真樹(ギター)/是永巧一(ギター)/荻原基文(ベース)/クラッシャー木村(ヴァイオリン)/一木弘行(コーラス)/SHUUBI(コーラス)
https://www.fellows.tokyo/news/?id=1133