充実の季節が実を結ばせたアルバム『Woderful world』
この素晴らしき世界で、生きることのすべてを歌う、歌う、歌う

 ものすごく優しい気持ちになる──。2年8か月ぶりとなるASKAのアルバム『Wonderful world』をひと通り聴き終えてみての率直な感想を、まずは本人にぶつけてみた……。

 「そういう感想を何人かの方におっしゃっていただきました。そこはとくに意識していたわけではないんですけれども、作品を作ることにただただ一生懸命だったから、きっとそこでそういう〈何か〉が宿ったのかな」

ASKA 『Wonderful world』 BURNISH STONE(2022)

 アルバムの出発点となったのは、コロナ禍になって最初の冬を迎える頃。ものを創り出すことを生業にしている多くの人たちがモチベーションを削がれ、どう抜け出していくかに頭を悩ませていた時期、まさに〈一生懸命〉にならざるを得ないなかでASKAは、3週連続3枚の配信シングルを合図に力強く季節を乗り越えて行った。

 「コロナで世の中が真っ暗なとき、最初の夏を乗り越えたっていう頃に〈いまこういう曲が欲しいよな〉と思って作り始めたのが“僕のwonderful world”。その後のツアーも第6波とともにスタートしましたけど、それはもう変わらない自信があったので、4ヶ月間、みんなでやり遂げました。コロナによって受けた弊害もあったけど、逆にもたらしてくれたものもありました。それはすごく大きかったと思うんです。そうですね、ずっと充実してました。みんなよく耐えて……まだわからないですけど、でもとりあえず出口が見えそうな状況じゃないですか。この時期にアルバムを出せて、タイトルはこの言葉がいいなあって。“僕のwonderful world”を作ったときと今とでは、〈Wonderful world〉の意味合いが違うんですよね」

 アルバムは、CHAGE & ASKAとして91年に放ったヒット“太陽と埃の中で”のセルフ・カヴァーで幕を開ける。この曲とふたたび向き合うことになったのは、春に放送されたお笑い芸人のコンテスト「G-1グランプリ」で、発起人となった元ツインカムの島根さだよしからのオファーがきっかけだった。

 「チャンスをいただけました。“太陽と埃の中で”は『STAMP』(2002年発表)のなかで一度セルフ・カヴァーしてるんですけど、ソロでは初めてでね。歌というのは、どこを聴かせるんだ、どこを強調したいんだっていうのがステージで歌っていくうちに身についてくるわけですけれども、成長するって言い方とは違って、自分がこの歌に対する向き合い方とか発し方を覚えていくんです。それを今回、僕はまざまざと経験させてもらって。だから今回のアルバムで、“太陽と埃の中で”を1曲目にするっていうのも、スッと決まって。これはアルバムのリード曲だよって」

 “太陽と埃の中で”のほかに、1989年に発表されたアルバム表題曲“PRIDE”のセルフ・カヴァー(2021年10月にシングルで発表済み)も。これは元プロボクサーの亀田興毅が自身の番組で使いたいということから実現したもので、こちらも他者からチャンスをいただいたことで〈今、響くべき歌〉として送り出された。また、過去の曲を形にしたということでは……。

 「“どんな顔で笑えばいい”は、20年前に一度ステージで披露してるんです。こんな曲ができたよって、まだ歌詞もついてなかったからラララで聴かせて。そこからちゃんと完成させようと幾度かトライしたんですけれど、なかなかうまくいかなくてね。今回はあらかじめ〈アルバムに入れる〉って決めて、徹底的に作り込みました。左右のチャンネルにヴォーカルが振り分けられているのは、CHAGE & ASKAの曲として作っていたものだったからで、ただ、歌詞を書いてるときは意識してなかったんですけど、左右で言葉の対比になっているんですよね」