
とりあえず聴いてくれ、聴いたらわかる!
――ラストを締めくくる“False Self”、これは“Damn”と対をなすような印象の曲ですね。
愛朔「僕はシンプルにメロが好きでしたね。覚えやすくて。今までにないようなメロディーで、耳にすごく残るし」
桂佑「“拷訊惨獄”(2019年作『鬼』収録)と同時期に作っていた曲ですね。当時のコンセプトに合わないということで没になっていたんです。今回、EPを出すことになり、コンセプトをガチガチに決めるよりも色々なことをする作品にしたいと話していたこともあって、持ってきました。
これはマイナスに捉えられるかもしれないけど、本当に変わったことや実験的なことは個人的に何もしていない。王道のメタルコアで、すごくわかりやすい構成になっています。本当に王道。
ただ、Rayの歌うサビのメロディーの主旋律、上のハモリ、そのさらに奥に上のハモリがあって、そこにさらにバイオリンのカウンターメロディーがある。そこにもうひとつスタッカートでバイオリンが入ってます。そこだけで5つのメロディーが行き交っていて、そのハーモニーとポリフォニーにこだわりました」
Ray「桂佑からは、〈泣きのギターソロにしてほしい〉という要望がありました。僕の中で〈泣きのギタリスト〉って誰なんだろうなって思ったときに、スティーヴ・ヴァイが浮かんで。その方が変則的なことを、タッピングはタッピングなんですけど、普通のギターソロではない癖のある人で、その味を入れたいなと思って僕なりに解釈して作りました」
幹太「それを聴いて、僕もドラムのフレーズがちょっと変わった。ちゃんとラストの大サビに向けてのクレッシェンドしていく感じを自分の中でも理解できたというか。そこからRayくんがギターソロを弾いてから歌うやん? そこのつなぎ目が解りやすくなった感じはある」
Ray「“Dusky-Vision”(2019年)以来かな。あの曲はギターソロが終わってからのクリーンパートは桂佑さんだったけど今回はギターソロのあとも僕なので、それは初めての挑戦ですね。
でもこれはレコーディングのときから絶対いい曲になることはわかっていたし、完成したものを聴いたらもっとよかったので、早く皆に聴いてほしいです。……とりあえず聴いてくれ、聴いたらわかる! ワイの語彙力はギターに全振りされとるんや!」
桂佑「歌詞は、バンドに色々あった頃に書いたので、ネガティブな……等身大のネガティブなものになっていますね」
――それを今あえて、そのまま発表するということは、今の自分たちに自信があるということでしょうか。
桂佑「自信もあるのかな。その当時出してたら、本当にネガティブだけで済まされたかもしれない。今のメンバーになって、バンドを立て直して、今が一番楽しいからこそ出せるのかもしれない」
幹太「でも、バンドをやっている限りプレッシャーや悩みはつきひんのなかと思っています。たとえば、メンバー脱退以外にもDEVILOOFってSpotifyのリスナー数は10万人超えてるじゃないですか。10万っていったらかなりのもの、数千人キャパの会場でやるバンドもそのくらいだったりする。けれど、僕らの目標は次の800人キャパを成功させたいという状況。それって、つまりはネット上の数字と現実の乖離ですよね」
――海外からの評価も高いので、コロナ禍においては〈来たくても来れない〉というファンも少なからずいるとは思いますが。
太輝「それもあるとは思います。ただ、僕らって活動当初からSNSでの反響も大きかったし、CDもすごく売れたんです。だけど、現実のライブには期待したよりもお客さんが集まらなかった。そういうネット上の評価と現実の動員が釣り合っていない状況が何年も続いていた。それで僕らも色々考えてアクションを起こしたけど、状況は変わらなかった。それは虚構の自分自身……“False Self”まんまですね。それもテーマのひとつではあります」
幹太「その頃の桂佑さんと太輝さんのことを考えると結構泣けてくるというか……」
太輝「泣けてくる?」
桂佑「俺たちが哀れで?」
Ray「哀れではないやろ」
幹太「頑張ってきたんやな~みたいな。PVもねえ、“Damn”とはかけ離れたナチュラル感というか。ほんまに等身大というか。見た目的にいうと“Damn”と“False Self”って全然違うけど、精神的なコンセプトが近いと言うか、自分の抱えている気持ちの問題が描写されている2曲だと勝手に思ってます。だから、僕はそういう気持ちでドラムをつけたしPV撮影に挑みました」
桂佑「そのとおりです!」
幹太「あっははは! 正解なんすかこれ?」