武藤祐志

ジャズピアニストであると同時にメタラーとして知られる西山瞳さんによるメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。第57回は、連載の恒例企画になったメタル出身のジャズプレイヤーへのインタビューです。今回西山さんが取材したのは、ギタリストの武藤祐志さん。ロック/メタルやジャズ/フュージョンを融合させたバンド、NEXT ORDERのリーダーであるほか、数多くのバンドやプロジェクトでギターを弾く鬼才の異色のキャリアに迫りました。 *Mikiki編集部

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メタル出身ジャズミュージシャンに訊くシリーズ、第4弾はギタリスト武藤祐志さんです。
武藤さんは、今までインタビューした方と違って、ジャズはジャズでも主にフリー系でご活躍です。現在もメタル系の音楽をされており、メタルをそのまま即興音楽にぶち込んでいる! ディストーションをかけるジャズギタリストは沢山いますが、音のスケール感が違うというか、それが武藤さんならではの音楽のキャラクターで、とりあえず少し演奏を聴いてもらってからの方が良いと思います。

Plastic Dogsの2021年作『IVERT』収録曲“Noria”。動画右のギターは武藤祐志

非常に面白い活動をされており、私もお仕事でご一緒したり、一緒に音を出す機会がありました。
LA、ハリウッドのミュージシャンズ・インスティチュート(MI)を出て、どうやって即興音楽の入り口を見つけたのか、ジャズとメタル、シームレスに活躍するルーツなどをお聞きしました。


 

エレキギターを知らなかったクラシックギター少年

――楽器を始めたきっかけは?

「6歳からクラシックギターを習っていました。当時大阪に住んでいたんですが、母親が昔、趣味でクラシックギターをやっていて、隣の駅にギター教室があるから行ってみようかって。『カルカッシ』っていう教則本があって、課題に合格したら帰りに喫茶店でプリンを食べさせてもらえるみたいな、そういう感じで楽しかったです。

そのあと岐阜に引っ越して、中日文化センターのクラシックギター教室に習いに行ったら、同い年ぐらいの生徒が何人もいたけど、僕は早くから始めてるから、ある程度弾けたんですよ。そうするとやっぱり〈あ、俺、結構弾けるじゃん〉と思って。そういうちょっとした優越感みたいなのはあったかな。あと、そこにレコード屋さんがあって、時々映画のサントラとかシングルのレコードを買ってもらったりするのが楽しかった。高校1年か2年までは習っていて、最後は”アルハンブラの思い出”とか少し難しいのもできるようになっていました。

それまで一応洋楽も聴いてたんだけど、スザンヌ・ヴェガとか、ビースティ・ボーイズとかランDMCとかを聴いてたところに、ラジオでヴァン・ヘイレンを聴いたんです。むちゃ格好良くて、それでエレキギターに興味を持ったの。それが高校1年生ぐらいの時。ライブ音源を流していたんだけど、ソロがアルバムと全然違うし、長い。その時、初めてアドリブっていうものを知ったんですよ。

そして、高校2年生の時、一生懸命家の手伝いをして初めてエレキギターを買ってもらえるっていうことになってね。雑誌『Player』で見て格好良いって思った、フェンダージャパンのギターを買ってもらったんです」

――エレキギターを手に入れて、最初にどういうことをやったんですか?

「まず、クラシックの曲を指で弾くには弦の幅が狭くて弾けなくて、初めてピックっていうのがあるって知ったんです。アンプを使って音を出すことも知らなかったから、〈なんでこんなに小さい音なんかな?〉と思って。アンプがないと鳴らないんだって知って、がっかりしたの。

そうしたら、エレキギターを買った次の日に、家にアンプが届いたんですよ」

――えっ!?

「以前、〈欲しいなあ〉と思って見ていた『Player』の懸賞があったんだけど、その懸賞でアンプが当たっちゃって。親が〈可哀想に〉と気を使って買ってくれたのかと思ったんだけど、送り元を見たら〈Player〉って書いてあるし。〈そういえば、数ヶ月前に応募してたわ〉と。びっくりしましたわ。そのアンプはまだ持ってます」

――それは一生手放せないですね。