ビリンバウの可能性を限りなく広げたナナ初期の名作がLPでリリース!

NANA VASCONCELOS 『Africadeus』 Altercat(2023)

NANA VASCONCELOS, NELSON ANGELO, NOVELLI 『Nana Vasconcelos, Nelson Angelo & Novelli』 Altercat(2023)

 ナナ・ヴァスコンセロス(1944~2016)はブラジル北東部ペルナンブーコ州の都ヘシーフェの出身。この度ナナがフランスのサラヴァ・レーベルから出した作品が約50年を経て再度LPでリリースされることになった。タイトルは『アフリカ・デウス』(1973)と『ナナ、ネルソン・アンジェロ、ノヴェーリ』(1975)の2作品。

 前者はナナの完全なソロ作品で、後者は盟友たち2人との共作だ。プロデュースはレーベル・オーナーのピエール・バルー。ナナは自分のメインの楽器として打弦楽器のビリンバウを選んだ。ブラジル国内でビリンバウは格闘技カポエイラの伴奏楽器と位置づけられてきたが、ナナはカポエイラとの紐付けをほどいてひとつの楽器としての表現を大きく展開したのである。その時にピエールのアイデアで制作されたのが『アフリカ・デウス』というビリンバウをメインにした作品。このアルバムでの演奏は50年を経過したいまでもナナの瑞々しい感性に満ち溢れ、大きな衝撃でもあり続けている。ナナによるビリンバウの演奏技術と表現は完成されていたことがこのアルバムを聴けばよく分かる。

 後者は1960年代末にミルトン・ナシメントとの共演で出会った3人が残した作品。ブラジル内陸部のミナス出身のネルソン・アンジェロはギタリストで、ジョイスのご主人だった人。彼らの『Nelson Angelo E Joyce』(1972年)という素晴らしいアルバムにはノヴェリが参加。ノヴェリはナナと同じヘシーフェ出身で、1967年にミルトンと知り合い1970年代後半まで活動を共にした。ヌーヴェルヴァーグが大好きでノヴェリというニックネームになった。“Toshiro”はあの三船敏郎に捧げられている。ここでは3人が自分の楽曲を持ち寄り、一つの作品として見事に成立させている。最後のトラックはナナが多重録音で全てを作り上げているが、実に聴きごたえがある。