【ハマ・オカモトの自由時間 ~2nd Season~】第4回 MICHAEL FRANKS 『The Art Of Tea』
ハマ・オカモト先生が聴き倒しているソウル~ファンクを自由に紹介する連載、第2章
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- 2014.10.02

今回の課題盤

「今回はマイケル・フランクス『The Art Of Tea』です。この間、秋をテーマに選曲することがあって。それでいいなと思ったので選びました」
――いわゆるAORものは初めてですかね。
「そうですね。ちょっと前に〈AORは何から聴いていいかわからない〉みたいなことをTwitterで呟いたら、GREAT3の片寄(明人)さんがいくつかオススメのアーティストをDMで送ってきてくださったんですよ。で、その時僕はアルバムのキャンペーン中だったからひとまずそれらをiTunesで検索して、ジャケを見て良さそうな作品をいくつか買ってみたんです。そのなかでいちばんキたのがこれで。秋の夜長にオススメです」
――耳に優しい、夜に聴きたくなる感じです。
「しかも1曲目が“Nightmoves”(笑)、シャレてますね。このアルバムにはジョー・サンプルが関わってるんですよ、この間亡くなられた鍵盤奏者の。あとはベースがウィルトン・ヘルダー、ギターがラリー・カールトンなど」
――おー、クルセイダーズの面々が参加しているんですね。ジャズ界隈の凄い人たちがいっぱい。
「この作品はソウル/ジャズって感じ。“Eggplant”っていう曲が有名なんですって。この曲もすごくいいと思うんですけど、個人的には3曲目の“Monkey See - Monkey Do”が好きです」
「ちなみにこれがデビュー・アルバム。73年に『Michael Franks』っていう作品をリリースしているらしいんですけど、実質的なデビュー作はこれだそうです。AORを知らなくてもすごく楽しめる、アダルティーなアルバム。『The Art Of Tea』っていうタイトルがいかにもって感じですよね。〈Tea〉を出しちゃうのか……と(笑)。でもその思惑通りの場所でかかるわけじゃないですか、このアルバムは」
――じっくり聴くも良し、ふんわり聴き流すも良し……というオシャレ感ですね。このアルバム以外にもマイケル・フランクスの作品は聴いてるんですか?
「聴いてないです(即答)」
――ハハハハハ(笑)。
「これが良すぎちゃって(笑)。でもベスト盤が出てますよね……」
各種ベスト盤にも収録
「あー、こういうことになるのか。つまりずっと〈イイ感じ〉なんですね」
――フルート~。このフルートの心地良さでますます一生懸命聴かなくなってしまうパターンですよ、私は……(笑)。
「でもフルート奏者のアルバムでいいやつありますよね。ヒューバート・ロウズの『Family』って知ってますか?」
――赤ちゃんジャケも有名ですよね。
「これを一度紹介しようと思ったんですけど、実はこの曲(“Family”)しか僕は好きじゃなかった(笑)」
――そうなんですね(笑)。最近聴いてるのはわりとアダルトな感じのものが多いんですか? 前回のトゥーサンも大人感ありましたが。
「いやいや、そんなことないです。たまたま今回秋がテーマの選曲依頼が来たので」
――この間ハマくんが、KCロバーツ&ザ・ライヴ・レヴォリューションがイイってツイートしていたから、今回はそれがくるかなと思ってました(笑)。
「あ~、あのジャミロクワイと言われてたやつだ。キメがちょっとダサめなタワー・オブ・パワーみたいな(笑)」
『KC Roberts & The Live Revolution』収録曲“Electric Lovers”
――ハハハ、それがよくわかる最適な動画が見当たらなかったけど……あの〈チャッチャッチャ♪〉ね(笑)。
「チャッチャッチャが圧倒的に(笑)。曲数が結構多いじゃないですか、そのなかの何曲かについてジャミロクワイって言ってんだなと思ったんですよ。16(ビート)の速いのと、ちょっと高い声で歌ってるからじゃないですかね。僕はフィッシュボーンを思い出した」
――あー、それもありますね。私はフュージョンだなと思ったりしましたよ。でも最後のほうでドラムンベースが出てきたりとか、いろいろやりたがっちゃってる感じもおもしろい。
「そうそう。どんどんスタイルが訳わかんなくなってきちゃって、結局何がしたいんだ、みたいな(笑)。ハードなリフも入ってくるし。でも僕はそのアルバムではテンポの遅い曲がカッコイイと思ったんですよ」
『KC Roberts & The Live Revolution』収録曲“Love Enough”
――んー、なるほど。いいですね。ではマイケル・フランクスに話を戻しましょうか(笑)。
「そうだった(笑)。僕はいわゆる〈AORの金字塔〉などと言われている作品を聴いてもあまりピンときていなくて。ちょっと沈みすぎというか、〈大人〉って言ってもそこまでカッコ良くないだろ、みたいな感覚があって。『The Art Of Tea』も金字塔と言われているのかもしれないけど、AORの入門編としてはすごく好きになれそうかなと思いました。それと、前回のアラン・トゥーサンで、彼の写真が謎なトリミングのされ方をしている裏ジャケについて話しましたが、こちらは逆にただ壁の前であぐらを組んでるだけでもカッコイイっていうね……」
――(笑)。このジャケ、ブラック・ジャズ(70年代の名門ジャズ・レーベルで、ジャケのテイストがブラック&ホワイトの額縁風スタイルで統一されている)のジャケ群に似てるなと思いました。
「あー、確かに。ていうかこれ↓なんか、そっくりじゃないですか(笑)」

ケリー・パターソンの73年作『Maiden Voyage』
――ホントだ(笑)、構図そっくり。
「あとは、この『The Art Of Tea』が76年の作品っていうところもポイントです」
――あ~、やっぱりこの時期の作品に惹かれるんですね。
「前回も言いましたけど、この70年代中盤の音には(自分の琴線に触れる)何かがあると思うんですよ」
――bounce時代からこれまで紹介してきたものも、近年の作品以外はわりと70年代前半~中盤が多いですし。
「レコーディング技術の問題なんでしょうね。やっぱり70年代後半になると、いろいろ使いたがりになっちゃいますから。これから70年代前半~中盤の不思議についてはもっと探究していこうかと。その頃の名盤を片っ端から聴いて全部好きだったら凄いですよね」
PROFILE:ハマ・オカモト
OKAMOTO'Sのヒゲメガネなベーシスト。最新作『Let It V』も大好評のなか、奥田民生やRIP SLYMEらを招いたコラボ・アルバム『VXV』(ARIOLA JAPAN)も絶賛リリース中! 現在、デビュー5周年記念全国ツアー〈OKAMOTO'S 5th Anniversary HAPPY! BIRTHDAY! PARTY! TOUR!〉を元気に開催中です。そして、11月12日にリリースされる住岡梨奈のニュー・アルバム『watchword』ではハマ氏がプロデューサーに初挑戦しているそうです。その仕上がりは乞うご期待! そのほか最新情報は、OKAMOTO'SのオフィシャルサイトへGo!