今回の課題盤

MICHAEL FRANKS 『The Art Of Tea』 Reprise(1976)

「今回はマイケル・フランクス『The Art Of Tea』です。この間、秋をテーマに選曲することがあって。それでいいなと思ったので選びました」

――いわゆるAORものは初めてですかね。

「そうですね。ちょっと前に〈AORは何から聴いていいかわからない〉みたいなことをTwitterで呟いたら、GREAT3の片寄(明人)さんがいくつかオススメのアーティストをDMで送ってきてくださったんですよ。で、その時僕はアルバムのキャンペーン中だったからひとまずそれらをiTunesで検索して、ジャケを見て良さそうな作品をいくつか買ってみたんです。そのなかでいちばんキたのがこれで。秋の夜長にオススメです」

――耳に優しい、夜に聴きたくなる感じです。

「しかも1曲目が“Nightmoves”(笑)、シャレてますね。このアルバムにはジョー・サンプルが関わってるんですよ、この間亡くなられた鍵盤奏者の。あとはベースがウィルトン・ヘルダー、ギターがラリー・カールトンなど」

 

クルセイダーズの79年作『Street Life』収録曲“Street Life”

――おー、クルセイダーズの面々が参加しているんですね。ジャズ界隈の凄い人たちがいっぱい。

「この作品はソウル/ジャズって感じ。“Eggplant”っていう曲が有名なんですって。この曲もすごくいいと思うんですけど、個人的には3曲目の“Monkey See - Monkey Do”が好きです」

『The Art Of Tea』収録曲“Eggplant”

75年作『The Art Of Tea』収録曲“Monkey See - Monkey Do”

「ちなみにこれがデビュー・アルバム。73年に『Michael Franks』っていう作品をリリースしているらしいんですけど、実質的なデビュー作はこれだそうです。AORを知らなくてもすごく楽しめる、アダルティーなアルバム。『The Art Of Tea』っていうタイトルがいかにもって感じですよね。〈Tea〉を出しちゃうのか……と(笑)。でもその思惑通りの場所でかかるわけじゃないですか、このアルバムは」

――じっくり聴くも良し、ふんわり聴き流すも良し……というオシャレ感ですね。このアルバム以外にもマイケル・フランクスの作品は聴いてるんですか?

「聴いてないです(即答)」

――ハハハハハ(笑)。

「これが良すぎちゃって(笑)。でもベスト盤が出てますよね……」

マイケル・フランクスの77年作『Sleeping Gypsy』収録曲“Antonio’s Song”・各種ベスト盤にも収録

「あー、こういうことになるのか。つまりずっと〈イイ感じ〉なんですね」

――フルート~。このフルートの心地良さでますます一生懸命聴かなくなってしまうパターンですよ、私は……(笑)。

「でもフルート奏者のアルバムでいいやつありますよね。ヒューバート・ロウズの『Family』って知ってますか?」

――赤ちゃんジャケも有名ですよね。

ヒューバート・ロウズの80年作『Family』収録曲“Family”

「これを一度紹介しようと思ったんですけど、実はこの曲(“Family”)しか僕は好きじゃなかった(笑)」

――そうなんですね(笑)。最近聴いてるのはわりとアダルトな感じのものが多いんですか? 前回のトゥーサンも大人感ありましたが。

「いやいや、そんなことないです。たまたま今回秋がテーマの選曲依頼が来たので」

――この間ハマくんが、KCロバーツ&ザ・ライヴ・レヴォリューションがイイってツイートしていたから、今回はそれがくるかなと思ってました(笑)。

「あ~、あのジャミロクワイと言われてたやつだ。キメがちょっとダサめなタワー・オブ・パワーみたいな(笑)」

KCロバーツ&ザ・ライヴ・レヴォリューションの2014年のコンピレーション・アルバム『KC Roberts & The Live Revolution』収録曲“Electric Lovers”

――ハハハ、それがよくわかる最適な動画が見当たらなかったけど……あの〈チャッチャッチャ♪〉ね(笑)。

「チャッチャッチャが圧倒的に(笑)。曲数が結構多いじゃないですか、そのなかの何曲かについてジャミロクワイって言ってんだなと思ったんですよ。16(ビート)の速いのと、ちょっと高い声で歌ってるからじゃないですかね。僕はフィッシュボーンを思い出した」

フィッシュボーンの91年作『The Reality Of My Surroundings』収録曲“Everyday Sunshine”

――あー、それもありますね。私はフュージョンだなと思ったりしましたよ。でも最後のほうでドラムンベースが出てきたりとか、いろいろやりたがっちゃってる感じもおもしろい。

「そうそう。どんどんスタイルが訳わかんなくなってきちゃって、結局何がしたいんだ、みたいな(笑)。ハードなリフも入ってくるし。でも僕はそのアルバムではテンポの遅い曲がカッコイイと思ったんですよ」

KCロバーツ&ザ・ライヴ・レヴォリューションの2014年のコンピレーション・アルバム『KC Roberts & The Live Revolution』収録曲“Love Enough”