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北爪啓之が選ぶジョージ・ハリスンの5曲

1. “Wah-Wah”(71年のライブアルバム『The Concert For Bangladesh』収録)
2. “Love Comes To Everyone”(79年作『George Harrison』収録)
3. “Unknown Delight”(82年作『Gone Troppo』収録)
4. “I Don’t Want To Do It”(85年作「ポーキーズ 最後の反撃」オリジナルサウンドトラック収録)
5. “Cheer Down”(89年作「リーサル・ウェポン2/炎の約束」オリジナルサウンドトラック収録)

〈優れた楽曲〉と言うのは畏れ多いので、私的に〈思い入れのある楽曲〉を時系列順で選びました。

1. コンサートの幕開けを務めたラヴィ・シャンカールも悪くないけれど、やはり真打ち登場とばかりに始まる“Wah-Wah”の鮮烈な高揚感にこそ、このライブの魅力が凝縮されていると思うのです。のっけからオールスターが揃い踏み。その中心に立つ白スーツ姿のジョージの何たる颯爽さよ。

71年開催〈バングラデシュ・コンサート〉の模様

2. なぜこれほどの名曲がチャートインしなかったのか、それもまたジョージなのか……。終盤の〈トゥトゥートゥトゥー〉という淡い歌声を聴くと不思議なほどの多幸感に包まれるのですが、シングルテイクではカットされているのがちょっと切ない。

3.『Gone Troppo』はセールス的には失敗したアルバムながら、〈トロピカル+80sシンセ〉なサウンドは2010年代以降のインディーポップにも通じるテイストで、むしろいまこそ再評価すべきかと。世評に反して好曲も多いと思うのだけど、とくに愛聴しているのは息子ダニーに捧げたこのジェントリーソング。“Something”な間奏のギターソロもたまりません。

79年作『George Harrison』収録曲“Love Comes To Everyone”

4. 映画「ポーキーズ 最後の反撃」のサントラは、デイヴ・エドモンズのプロデュースが冴える大好きな1枚ですが、とりわけ出色なのがジョージがカバーしたボブ・ディランの未発表曲。この軽快なポップチューンが内包する甘くほろ苦いノスタルジーに、いつだって胸が詰まってしまうのです。

5. 映画「リーサル・ウェポン2/炎の約束」の主題歌ですが、劇場で観たこともあってか贔屓のナンバー。一聴してジェフ・リンとわかる音作りも、ジョージのアグレッシブなスライドギターも文句なく素晴らしい。実は91年の東京ドーム公演の演目で最もビックリ&嬉しかったのが“Cheer Down”で、末席で一人興奮していたことも良き思い出。