©Nick Suttle

ジョンスコ翁は自由なのだ。

 ジョン・スコフィールドがスティーヴ・スワロウ、ビル・スチュアートと制作した『Swallow Tales』(ECM 2020)の“Eiderdown”の演奏を聴いて、やっぱりジャズっていいなと思った。この曲を知り尽くし、ジャズを隅々まで味わい尽くした三人の、知識や経験に縛られないオープンなアプローチに、ジャズが疼いた。そして自身の名前を冠した初となったソロを挟んで、ベースをヴィセンテ・アーチャーに代えて再びトリオによるアルバム『Uncle John’s Band』を制作した。

JOHN SCOFIELD 『Uncle John’s Band』 ECM/ユニバーサル(2023)

 だがスティーヴの楽曲を本人を交えて演奏するというプランの『Swallow Tales』と、この、ボブ・ディランやニール・ヤング、マイルスのカヴァーやオリジナルを交えた二枚組の雰囲気に何か違いがあるのかといえば、そういう感じはしない。発売元の資料によれば「私たちはどこにでも行けるような気がする」と本人は語っているようだが、むしろ、いわゆるジョンスコは、微動だにしていない感じがする。

 ジョンスコの音楽性が変化に乏しいなどと言っているのではない。70年代のデビューアルバム以降、彼には変化の必要がなかった。それほど音楽家として彼は初期から熟し、完成していたと思う。彼が動かしてきたのは音楽だった。だから彼自身は動く必要がなかった。レイ・チャールズのカヴァー集でも、デニス・チェンバースとの『Blue Matter』でも、マーク・ジョンソンの『Bass Desires』を聴いてもジョンスコを変化させることなくいつも音楽を動かしてきた。この新譜でもジョンスコの音色、フレーズ、そしてそれらが浮き上がらせるサウンド・テクスチュアが相変わらず聴こえてくる。〈どこにでも行ける〉という言葉は、どこかを目指しているわけではないという意味だと思う。そんなターゲットからの拘束から解放される場所としてジョンスコはECMを選んだのだろう。ジョンスコ叔父さんは、今心から解放されているのかもしれない。