日本屈指の工場地帯を持つ街・川崎がスウィングし、グルーヴする音の宴〈かわさきジャズ〉。
本年度のクライマックスは、〈ブラジル音楽とジャズの一夜〉!
〈ジャズは橋を架ける〉をキーメッセージとして、2015年に開始。川崎市全体をひとつの大きなジャズのステージとして捉え、さまざまな角度からこの音楽の魅力を紹介し、あらゆる人々をこの音楽のとりこにしてしまおうという豪快なプロジェクトが〈かわさきジャズ〉である。
通算9回目となる〈かわさきジャズ2023〉は、去る9月13日に開幕した。以降、約2カ月にわたって、ホールライブの〈MUSIC BRIDGE〉、まちなかステージの〈PEOPLE BRIDGE〉、レクチャー・ワークショップ・人材育成の場である〈FUTURE BRIDGE〉という三本柱のもと、市内を代表する音楽施設はもちろん、野外ライブ、船上クルーズなど、あらゆるところでジャズが鳴り響く。日本屈指の工場地帯を持つ街がスウィングし、グルーヴするのだ。
そして11月19日、〈かわさきジャズ2023〉のクライマックスというべき公演がミューザ川崎シンフォニーホールで行われる。題して〈A Night of Brazilian Music & Jazz〉。ブラジル音楽とジャズを結ぶピアニスト/ヴォーカリストのイリアーヌ・イリアスのバンドと、トランペッターのエリック・ミヤシロが音楽監督を務めるジャズ・オーケストラ〈BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO〉によるダブルビル・コンサートだ。
第一部に登場するイリアーヌは、グラミー賞とラテン・グラミー賞双方に輝くと共に、全米ジャズ・チャートやブラジル音楽チャートのトップにも立つヒット・メイカー。ブラジルのサンパウロに生まれ、12歳でピアノ演奏を開始した。アミルトン・ゴドイ(ジンボ・トリオ)に師事し、シンガーソングライターのトッキーニョや、ボサ・ノヴァの立役者のひとりに数えられる詩人ヴィニシウス・ヂ・モライスらとの交流を経て、1981年に米国ニューヨークへ進出した。マイク・マイニエリ率いる〈ステップス・アヘッド〉への参加、ランディ・ブレッカーやマーク・ジョンソンとのコラボレーション等を行う一方で、自身のアルバムもコンスタントに発表。しかもその内容は最新作『クワイエチュード』のようにブラジル音楽をテーマにしたもの、『サムシング・フォー・ビル・エヴァンス』などのジャズもの、ヴィラ=ロボスやショパンの楽曲を奏でた『オン・ザ・クラシカル・サイド』など多岐にわたる。共演メンバーはイリアーヌの夫君で米国ネブラスカ州出身のマーク・ジョンソン(ベース)、サンパウロ出身のリアンドロ・ペレグリーノ(ギター)、リオデジャネイロ出身のラファエル・バラータ(ドラムス)。演奏予定曲目には“デサフィナード”、“イパネマの娘”などボサ・ノヴァの大定番も含まれている。コンサートの第1部では、マークとのおしどりコンビぶりはもちろん、リー・リトナーからも才能が高く評価されるリアンドロ、ジョアン・ボスコやホベルト・メネスカルのサポートも務めるラファエルのプレイも大きな喜びを与えるに違いない。なお、このバンドは11月16日から18日にかけてブルーノート東京に登場する。クラブとコンサート・ホール、その両方で、イリアーヌの“現在”を感じるのも一興だろう。
第2部は、〈BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO〉によるステージが行われる。音楽監督のエリック・ミヤシロは米国ハワイ州出身。少年の頃に〈ハイノート・トランペットのカリスマ〉メイナード・ファーガソンに認められ、その後バディ・リッチ楽団、ウディ・ハーマン楽団、メル・ルイス楽団等で演奏。'89年に来日し、自身のEM BAND、小曽根真 featuring No Name Horsesを始めとするさまざまなアンサンブルで活躍、セッション・ミュージシャンとしても実績を積み重ねてきた。そのエリックが、多種多彩な音楽生活で得たノウハウを注ぎ込んだといっても過言ではないのが、こちらのオールスター・ジャズ・オーケストラなのだ。ホームグラウンドである〈ブルーノート東京〉のほか、モントルー・ジャズ祭をはじめとする海外公演でもオーディエンスを沸かせたこの精鋭集団が、〈かわさきジャズ〉に登場するのは今回が初めてだという。
「ジャズ・オーケストラの魅力は何ですか?」私は単刀直入にエリック・ミヤシロに尋ねた。すると、間髪おかず歯切れのよい回答が返ってきた。
「〈次に何が起こるかわからない〉というインプロヴィゼーション(即興)のワクワク感と、いろんな楽器が奏でる色彩感豊かなアンサンブルが同時に味わえるのが大きな魅力です。しかもジャズ・オーケストラは、クラシック音楽的なアプローチなど、幅広い世界観を表現することができます。僕にとっては最高、最強のフォーマットですね」
これ以上、何を付け足せばいいのだろう。演奏曲目にはチック・コリア作“スペイン”、ジョー・ザヴィヌル作“バードランド”、いっそう再評価が進む鍵盤奏者・作曲家である和泉宏隆が遺した“宝島”などが予定されている。フュージョンや吹奏楽に取り組んでいる人々にとっても必見必聴のプログラムになるに違いない。しかもラストでは、ジャズ・オーケストラとイリアーヌたちとの共演も計画されているというから、期待はいっそう高まる。
またこの日は、開演前に〈ロビーコンサート〉も予定されている。しかもそこに登場するのが注目度急上昇の気鋭ピアニスト、小沢咲希率いるトリオなのだから、エキサイトメントは保証されたようなもの。観客の心にガッツリ強い印象を刻み込むこと間違いなしのパフォーマンスを楽しみにしたい。
世代、地域、フォーマット、カテゴリーを超えて豊穣に響き渡るジャズという音楽。11月19日の川崎は、その尽きない魅力を、これでもかと味わうことのできる記念日となりそうだ。
*2023年11月9日追記
〈A Night of Brazilian Music & Jazz〉出演者および内容変更のおしらせ
2023年11月19日(日)に神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホールでの公演に出演を予定していたイリアーヌ・イリアス(ピアノ&ヴォーカル)は、足に重大な怪我を負い、医師から渡航および演奏の停止を言い渡されたため、来日ができなくなりました。そのため、第1部に出演するリアンドロ・ペレグリーノ(ギター)、マーク・ジョンソン(ベース)、ラファエル・バラータ(ドラムス)も来日を見合わせることになりました。これに伴い、公演の第1部は〈山中千尋トリオ(featuring シンサカイノ& ダニエル・バエデール )with special guest MARIANA〉に変更して実施されます。なお、第2部の〈ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ〉は予定どおり出演します。すでにお求めいただいたチケットは券面通りの日時・会場・座席番号で有効です。
この変更に伴い、〈かわさきジャズチケットオンライン〉ではチケットの販売が停止されました。11月13日(月)以降に主催・会場であるミューザ川崎シンフォニーホールチケットセンターで販売が再開される予定です。
ミューザWebチケット:https://kawasakijazz.jp/news/detail.php?id=253
チケットカウンター:10:00~19:00
電話番号:044-520-0200(10:00~18:00)
また今回、内容の大幅な変更が生じたため、ご希望の方には払い戻しがされます。詳しくは〈かわさきジャズ〉のオフィシャルサイトをご覧ください。 *intoxicate編集部
■イリアーヌ・イリアスからのメッセージ
This is Eliane Elias, Dear friends and fans from Japan,
I have suffered an injury, a foot injury, quite serious…And my doctors do not allow me to travel.
So I’m cancelling all of the remaining dates that I have for 2023, And that includes my dates in Japan.
I was so looking forward to coming back to Japan But we are re-scheduling for 2024.
I am very sorry that I can’t be there this time, But I look forward to coming back.
And hopefully you can be there with us in 2024.
日本のファンの皆さん、イリアーヌ・イリアスです。
先日、足にとても重い怪我をしてしまい、ドクターより海外旅行を禁じられ、日本の日程も含めた2023年の年末の公演をすべてキャンセルせざるを得なくなってしまいました。
日本に戻ってくることをとても楽しみにしていたのですが、2024年での来日に再調整することになりました。
今回日本に行けなくなってしまい、本当に残念です。
ですが、また戻ってこられる日を楽しみにしています。
皆さんに、2024年にお会いできることを願っています。
■山中千尋からのメッセージ
最も敬愛する音楽家であるイリアーヌ・イリアスさまのお早いご回復を心より祈念しております。当日はイリアーヌさまのレパートリーを弾かせて頂きます。皆さまとイリアーヌさまの素晴らしい音楽をご一緒に慈しむ時間となれば幸いです。
https://kawasakijazz.jp/news/detail.php?id=253
LIVE INFORMATION
かわさきジャズ2023
A Night of Brazilian Music & Jazz
2023年11月19日(日)神奈川 ミューザ川崎シンフォニーホール
開場/開演:17:00/18:00
■チケット(全席指定・税込)
S席:6,500円
A席:5,000円
U25 S席:3,250円
U25 A席:2,500円
※未就学児入場不可
■プログラム
第1部
出演:山中千尋トリオ(featuring シンサカイノ& ダニエル・バエデール )with special guest MARIANA
山中千尋(ピアノ)
シンサカイノ(ベース)
ダニエル・バエデール(ドラムス)
MARIANA(ヴォーカル) *special guest
曲目:デサフィナード/イパネマの娘 ほか
第2部
出演:ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ
曲目:スペイン、バードランド、宝島 ほか
■17:20~17:40 ロビーコンサート
小沢咲希(ピアノ)/安田幸司(ベース)/安藤正則(ドラムス)
※混雑が予想されますので、あらかじめご了承ください
■会場・お申し込み
ミューザ川崎シンフォニーホール:044-520-0200(10:00〜18:00)
主催:ミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市文化財団グループ)
共催:かわさきジャズ実行委員会/川崎市