音楽史における最高峰のライブフィルム「ストップ・メイキング・センス」。同作の40周年を記念して制作された「ストップ・メイキング・センス 4Kレストア」が、現在劇場にて公開中だ。
Mikikiでは、オリジナル版が公開された84年当時のインパクトと4Kレストア版の見どころを音楽ライターの大鷹俊一に綴ってもらった。以下のテキストを読んだのち、ぜひ何度でも劇場に足を運んでほしい。 *Mikiki編集部
トーキング・ヘッズのすべてが収められたライブフィルム
すでに劇場公開が始まっているトーキング・ヘッズのライブフィルム「ストップ・メイキング・センス 4Kレストア」の評判が高い。もちろんオリジナル発表時から音楽映画の大傑作とされてきたが、よりシャープな画像とエッジの効いたサウンドへとバージョンアップされたそれは、まさに劇場でこそ体験してほしい作品だ。
全米最高の美術大学、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインに在学していたデイヴィッド・バーンを中心に結成されたトーキング・ヘッズの83年のステージを、のちに映画「羊たちの沈黙」(91年)でアカデミー監督賞などを受賞するジョナサン・デミが撮影した作品が「ストップ・メイキング・センス」だ。84年の公開当時から史上最高の音楽ドキュメンタリーとの評価を得た作品であり、その後バーンがスパイク・リー監督と組んで制作し、日本でも劇場公開された「アメリカン・ユートピア」の原点とも言えるライブフィルムである。
ニューヨークパンクの流れのなかでもアート志向の強いグループとして知られたトーキング・ヘッズは、ブライアン・イーノをプロデューサーに迎え、アフロビートやワールドミュージック、ファンクの要素を大胆に組み込んだアルバム『Remain In Light』(80年)を大ヒットさせ一躍トップバンドとなる。
そして83年12月、同年リリースのアルバム『Speaking In Tongues』を引っ提げたツアーのハリウッド・パンテージ・シアターでのライブを収めたのが「ストップ・メイキング・センス」である。カセットデッキを持って出てきたバーンのソロに始まり、バンドでのパフォーマンス、そしてPファンク軍団のマスター、バーニー・ウォーレル(キーボード)やギターのアレックス・ウィアーなどの腕利きやコーラスが加わった大編成での演奏など、さまざまなパターンで楽しませる。
バーンの代名詞のようにもなったビッグスーツを着た奇妙なノリのダンスもあれば、徐々にステージセットが形作られていったり、照明スタンドを効果的に使ったパフォーマンスなど、何度見ても飽きることがない、当時のトーキング・ヘッズのすべてが収められている。