結成30周年にして堂々のセルフ・タイトル――稀有なバンドの軌跡と在り方を再認識することで新たにした表現への情熱と確信が、この4年ぶりのニュー・アルバムには息づいている!

自分たちのことを再認識した

 前作『十色定理』(2020年)の発表直後よりコロナ禍へ突入。その後は20回にも及ぶ配信ライヴやオーケストラとのコラボ・コンサートなどを軸に活動を重ねてきたPlastic Treeが、約4年ぶりのニュー・アルバムを完成させた。その名も『Plastic Tree』――結成30周年にして堂々のセルフ・タイトルである。

 「アルバムのタイトルって歌詞と違って観念的なものだから、これまでは何でもよかったような気がしてるんです、自分のなかでは。レッド・ツェッペリンみたいなもので(笑)、ほんとは『Plastic Tree I』『Plastic Tree II』でよかったんだけど、そのときどきで何かしらの意味を付加してきてて。それが今回は、自分たちですら何とも表現し難いこのバンド自体をタイトルにしたいって気持ちが、制作のわりと早い段階からあったんです。作品をリリースをして、ツアーをやって……っていうバンドとしてのサイクルがコロナ禍で一回途切れてしまったこと、そこから配信ライヴを通じて自分たちの過去の作品を新しい形で見せるっていう――Plastic Treeっていうバンドを集中して再認識する時期があったっていうこと、あとは自分たちのキャリアや年齢のこと、結成30周年っていうタイミング……それら全部を踏まえたときに、『Plastic Tree』っていうタイトルを付けるならいまなんじゃないかと思って」(有村竜太朗、ヴォーカル)。

Plastic Tree 『Plastic Tree』 ビクター(2024)

 そんな本作は、有村が作詞を、長谷川正(ベース)が作曲を担当した2枚のシングル“痣花”“ざわめき”に加え、4人それぞれが作詞/作曲を手掛けた2曲ずつの計10曲で構成。編曲はすべてPlastic Tree名義となっており、言わば、作家としての各々の個性をバンドのミュージシャンシップでもって立体的に音像化したような内容だ。オープニングは長谷川による“ライムライト”。輪郭を滲ませたピアノの旋律を力強いバンド・サウンドが引き継いだ瞬間、まるで実体を得た幻想に取り込まれるような感覚に陥る一曲だ。

 「ライヴの1曲目とかもそうですけど、曲が始まる前にSEが鳴って、メンバーが出てきて演奏が始まるみたいな、そういうものを音で表現したような曲が欲しくて作ってみた曲です。歌詞も“ライムライト”って言葉自体が〈舞台装置〉だし、チャップリンの有名な映画もあるし、やっぱり演劇的な要素が強い言葉だと思うんで、そういうものをこの曲から感じ取ってもらって、聴いた人がこのアルバムに入り込んできてくれたらなって」(長谷川)。