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あと何年かかる?

 その間、エイドリアンはジェフにアプローチして楽曲作りを試みるも、結果的に活動意欲を取り戻すまでには至らず。一方のベス・ギボンズはラスティン・マン(元トーク・トークのポール・ウェッブ)と組んでジャズ/フォーク寄りのタッグ作品『Out Of Season』(2002年)をリリースしている。そんななかで、2003年に書いた“Magic Door”をきっかけにジェフは活力を取り戻していく。最終的にポーティスヘッドの次作に収まることになる同曲は、そのまま3人のリユニオンのきっかけになった。勢いに乗ってジェフとアトリーはコーラルのアルバム『The Invisible Invasion』(2005年)を共同プロデュースしており、その手応えもジェフのやる気を後押しすることになったのだろう。同じ2005年の2月、ポーティスヘッドはブリストルでの津波慈善コンサートに出演。実に7年ぶりのパフォーマンスだったが、ジェフは自分たちがサード・アルバムの制作中であることを明かした。2006年にはセルジュ・ゲンスブールのトリビュート盤に“Un Jour Comme un Autre (Requiem For Anna)”のカヴァーを提供。その間も制作をマイペースに進め、長い時間を注いだ新作『Third』が世に出たのは、〈コーチェラ〉のヘッドライナー出演を経た2008年4月のことであった。

 そのリリースから1か月後にジェフはさらなる新曲への意欲を表明し、2009年になると2010年の後半にもアルバムがリリースされる可能性があることを示唆した。同年の12月にチャリティ・ソングとして“Chase The Tear”をリリースしたことも信憑性を高めたものだ。が……2011年には国内外の大規模なフェス出演やツアーを重ね、2012年からアルバム制作の作業を開始すると発言。〈次のアルバムが出るまでにはさらに10年かかる可能性がある〉と冗談めかして語ってもいる(もうとっくに10年経っている!)。

 2015年にはロンドン映画祭で上映された「ハイ・ライズ」のためにアバのカヴァー“SOS”を発表。翌年には同曲のMVを国会議員ジョー・コックス殺害事件とEU離脱投票を落とし込む形で発表してもいる。その2016年には英国音楽への顕著な貢献に対してアイヴァー・ノヴェロ賞を受賞した。そんなポーティスヘッドが久々に動いたのは、2022年5月に〈War Child UK〉が主催したウクライナ戦争難民や子どもたちのためのコンサートへの出演。これも7年ぶりのパフォーマンスだった。

 映画音楽の世界に軸足を置いて精力的に活動するジェフ、プロデュース業やセッション・ギタリストとして活躍するエイドリアンに加え、極めて寡作なベスも今回のソロ作で表舞台に帰ってきた。そう思えば、もしかしたらその日は近い……のか?  *香椎 恵

左から、ジェフ・バーロウが参加したネナ・チェリーの92年作『Homebrew』(Virgin)、ポーティスヘッドが参加した2006年のトリビュート盤『Monsieur Gainsbourg Revisited』(Barclay)