”シカ色デイズ”の世界的ヒットの要因はスカにあり?　YOASOBI、Creepy Nutsに続く令和のアニソン決定版を徹底考察

”シカ色デイズ”だけじゃない!　アニソン × スカの名曲たち

〈シカ〉だから〈スカ〉という話を聞くと、完全にダジャレが先行しているようにも思えるが、実はアニソンとスカの相性はよく、1990～2000年代のスカパンクブームや東京スカパラダイスオーケストラらの活躍でスカが日本でもポップスとして定着して以降、スカの要素を取り入れたアニソンが数多く制作されている。

オーセンティックなスタイルの宮本佳那子”キラキラしちゃって My True Love!”（2007年／アニメ「Yes!プリキュア5」前期エンディングテーマ）や、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也が楽曲提供したスカ × ロック路線の戸松遥”Q&A リサイタル!”（2012年／アニメ「となりの怪物くん」オープニングテーマ）などが有名どころと言えるだろう。

そんななかで、”シカ色デイズ”のバックボーンにある文脈を探るうえでぜひ紹介したいのが、アニメ「苺ましまろ」のオープニングテーマ”いちごコンプリート”（2005年）だ。「苺ましまろ」は小学生の女の子たちの何でもない日常の会話劇を描いた〈日常系〉の先駆けとも言える作品で、”いちごコンプリート”を歌っているのは、千佳（CV：千葉紗子）、美羽（CV：折笠富美子）、茉莉（CV：川澄綾子）、アナ（CV：能登麻美子）のメインキャラクター4人。シンセブラスとスカのリズムを取り入れたノリのいいサウンドに4人の愛嬌ある歌声が合わさった、アニソンならではのかわいさが詰まった楽曲になっている（余談だが〈かわいいは正義〉というフレーズは「苺ましまろ」のキャッチコピーから生まれたもの）。

さらに〈日常系〉を代表するアニメ「ひだまりスケッチ」のオープニングテーマ”スケッチスイッチ”（2007年）も、裏打ちのリズムが高揚を誘うアッパーソングで、スカっぽさを感じられなくもない。この楽曲もまた作中のメインキャラクターである女の子4人が歌うキャラソンなのだが、2000年代中盤頃から数多く制作された〈日常系〉アニメでは、キャラクターたち（もしくはそれを演じるキャストによるユニット）が賑々しく歌唱する楽曲がオープニングを飾るのが主流であり、それがアニソンにおける一つの潮流として人気を集めていた。

ほかにも「みなみけ」「らき☆すた」「ゆるゆり」「ご注文はうさぎですか?」など作品名を挙げていくとキリがないのだが、”シカ色デイズ”はそれら〈日常系アニメのキャラクターが歌うオープニングテーマ〉の系譜を感じさせる作りになっているのもまた、昔からのアニメファンを含む幅広い層に支持されている理由だと思う。

”シカ色デイズ”は令和のアニソン決定版

先述したインタビューで福森は、原作の内容がいわゆる〈平成のギャグマンガ〉の文脈を感じさせるものだったので、主題歌も〈平成のアニソン／キャラソン〉の雰囲気を踏襲しつつ、いまのサウンド感にモダナイズした〈令和のアニソン決定版〉になることを目指したと語っている。そういえば〈イントロ耐久1時間〉動画も、完全にニコニコ動画のノリを感じさせるものだ。

原作の内容や公式のプロモーション方法を含め、2000～2010年代の空気感や文脈を上手く取り入れつつ、TikTokなどのショート動画が隆盛を誇るいまの時代感にフィットする強烈なインパクトを持った楽曲。それが“シカ色デイズ”のバズった理由なのだろう。アニメを越えてこの夏を賑わす大きな祭り、バカ（馬鹿）ならぬシカ（鹿）になって楽しむシカない。

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