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一人ゴスペルのような藤井 風のボーカル

A.G.クックといえば、機械的な表現と人間的な表現が一体となった空間表現が魅力の一つだが、これまでに触れたことのない、でも確かに心地よいと感じられる“Feelin’ Go(o)d”の音世界には、まさにその手腕が存分に活かされているように感じられる。

そして、もう一つの大きな特徴が藤井のボーカルの扱い方である。これまでの作品においても多彩な歌声でファンを魅了してきた藤井だが、“Feelin’ Go(o)d”では程よく力が抜けた、聴き手に優しく寄り添うような柔らかな表現となっている。楽曲が進んでいくごとに異なる歌声の層が生まれ、緻密に重なり合っていく。それはまるで、一人でゴスペルを作り上げているようだ。

そんな藤井のボーカルと前述のトラックが重なり合うことによって、楽曲が後半に差し掛かる頃にはまるで美しい音楽のシャワーを浴びているかのような感覚に陥る。それはまさに楽曲のテーマと合致するものであり、その感覚を表現するための最高の素材として、藤井のボーカルを大胆かつ丁寧に使っているというわけだ。

このように、まさに自身の持ち味を出しつつも、あくまでアーティスト自身や元の楽曲の魅力を最大限に引き出すプロデューサーとしてのA.G.クックの才能が、“Feelin’ Go(o)d”では存分に発揮されている。だが、それはあくまで藤井の作り上げた楽曲が、ただ単に心地よいだけの楽曲ではないからこそ実現できたものだろう。

これまでの楽曲(特に“満ちてゆく”)で徹底的に愛というテーマと向き合い続けてきたからこそ、〈心は言葉を失くして/感じられるは愛だけ〉というフレーズも確かな説得力に満ちている。“Feelin’ Go(o)d”に詰まっているのは、そんな藤井が描く新たな理想郷であり、そのビジョンにA.G.クックが強く共鳴したからこそ、このユニークで心地よい楽曲が誕生したのではないだろうか。

5月に初の全米ツアーを開催し、7月にはアメリカのリパブリック・レコード(米ユニバーサル内の音楽レーベル)と契約するなど、本格的な海外活動を予感させる藤井 風。これまでの楽曲でも十分に海外での評判を獲得しているが、価値観も共鳴しているであろうA.G.クックとつながりを持っているという事実は、彼にとっても心強いはずだ。私たちに理想郷を見せてくれた藤井は、これから先、どんな景色を見せてくれるのだろうか。

 

 


RELEASE INFORMATION

藤井 風 『Feelin’ Go(o)d』 HEHN/ユニバーサル(2024)

リリース日:2024年7月26日(金)
配信リンク:https://fujii-kaze.lnk.to/FeelinGood

TRACKLIST
1. Feelin’ Go(o)d

 

LIVE INFORMATION
Fujii Kaze Stadium Live “Feelin’ Good”

2024年8月24日(⼟)、25日(⽇)神奈川・横浜 ⽇産スタジアム
開場/開演/終演予定:16:00/17:45/20:15 ※荒天中止
主催:DISK GARAGE
企画・制作:HEHN RECORDS
協力:日産スタジアム/UNIVERSAL SIGMA
問い合わせ:https://www.diskgarage.com/form/info

Fujii Kaze Stadium Live “Feelinʼ Good”特設サイト:https://fujiikaze.com/feelingood/