サマー・アンセム“Espresso”でポップ・シーンの最前線に躍り出たサブリナ・カーペンター。〈♪遅くまで仕事してるの、私って歌手だから!〉を合言葉にSNSでバイラルヒット化し、キュートでスウィートな小悪魔的な悪戯っぽさで魅了した。だが、突然こんなに大きなヒットを当ててしまったら、その後が……などという心配は無用だったと教えてくれるのが、約2年ぶりの6作目『Short n’ Sweet』だ。なかなか自分らしいサウンドが見つからず試行錯誤していた時期もあったけれど、ついに自身にピッタリの金塊を掘り当てた。前作『Email I Can’t Send』からじわじわヒットした“Nonsense”や“Feather”のアンニュイ路線を引き継ぎつつ、よりポップにカラフルに、ブリージーなヴォーカルが炭酸飲料のように爽やかに弾け出す。
そのタイトルにもある通り、小ぶりな(自身の身長にもかけているはず)12曲が並ぶアルバムは、ワン・ダイレクションで知られるジュリアン・ブネッタとジョン・ライアンの他、デュア・リパなどを手掛けるイアン・カークパトリック、テイラー・スウィフトでお馴染みのジャック・アントノフらが共作/プロデュース。ハリー・スタイルスやオリヴィア・ロドリゴを手掛けるエイミー・アレンも共作で参加。大声を張り上げる熱唱系は見当たらず、肩の力が抜け切ったフワフワとしたソフトなポップ・チューンで優しく翻弄する。なかには“Slim Pickins”のような清々しいカントリー調、“Sharpest Tool”のようなフォーク調、アリアナ・グランデを彷彿とさせる“Good Graces”のようなR&B調など、ジャンル的には異方向を向いてはいるが、同じような色調でまとめ上げ、見事に統一感を生み出している。インディー・ポップという角度ではクレイロや、先ごろ彼女が客演したガール・イン・レッドと並べて聴くこともできそうだ。しかし唯一無二なのが、彼女のユーモアのセンスと、そのさりげなさ。全編ウィットに富みまくりで、18禁な単語や表現もビシバシ投下。でも、決して下品になったり不快感を与えることなく、思わず一緒にフフッと笑ってしまうものばかり。何食わぬ顔で、随所にスマートな笑いをちりばめている。
いまなお大人気の“Espresso”に続いて、本作からは“Please Please Please”と“Taste”も大ヒット中。三つ巴でチャートを独占し、さまざまな新記録を更新中だ。ツアーに参加したテイラー・スウィフトのご加護による効果も大きかったと思われるが、このまま上手く転がればテイラー級のスターとなりそうな、そんな予感すら抱かせる。