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影響力の面でもセールスの規模でも21世紀を代表するバンドとなったコールドプレイ。月をテーマにした通算10枚目のアルバムは〈愛の力〉をどこまでも広げていく!

愛の力を信じる

 コールドプレイの10作目のスタジオ・アルバム『Moon Music』は、彼らの願いを込めた名作になりそうだ。フロントマンのクリス・マーティンは、Instagramに投稿した動画で、3年ぶりの新作のテーマについてこのように語った。

 「『Moon Music』は、自分の内側の争いや、外の世界の争いに苦しんでいる時の一番の答えは、愛だということを伝えようとした作品だと僕は思う。愛するのが難しいと感じる時でもね。僕は頻繁に難しいと感じていて、だからたぶん僕たちは、それを忘れないように愛についてたくさん歌おうとするんだろうね。多くの曲が、僕が、あるいは誰もが人として感じる困難についてのものだ。内面でも外の世界でもいっぱいクレイジーなことに直面した時の無力感に対する反応なんだけど、答えを探して、それで僕が詩とか本とか曲の中で見つけて影響された答えはどれも、自分に優しくすると自分自身でいられるようになるから、それで他人もありのままでいさせることができるようになって、より平和に物事を解決できるんじゃないかっていう。僕はそう感じてるんだ」。

COLDPLAY 『Moon Music』 Parlophone/ワーナー(2024)

 〈愛の力を信じよう〉という彼らのメッセージは、BTSとの共演曲“My Universe”を筆頭に過去最高にポップになった前作『Music Of The Spheres』(2021年)とその世界ツアーに、すでに反映されていた。彼らの愛は地球にも向けられていて、初めてサステナブルなツアーに挑戦し、結果的に二酸化炭素の排出量を前ツアーと比べて59%も削減することに成功。世界で900万人を超える観客動員数を達成した同ツアーは、U2の記録を抜いてロック・アクトとしては史上最高のコンサート収入を達成している。2022年5月、テキサス州ヒューストンの公演を観たが、通常のコンサートとは違う〈体験〉と呼べるショウで、巨大なスタジアムを一つにする4人のパフォーマンスが格別だった。

 その続編となる『Moon Music』は、世界ツアーの合間にレコーディングされた。前作に続いてスウェーデンの大ヒットメイカー、マックス・マーティンをプロデューサーとして起用。前述の動画で、クリスは「それと、良いギターがたくさん入ってるよ」と笑顔を見せていたが、2曲の先行シングルは、どちらも優れたギターだけでは語れない多様なサウンドだ。タイプがまったく違うものの、最高にキャッチーで昂揚感があり、シンガロングに最適という点は共通している。