途轍もない昂揚感と祝祭感で魅せる圧巻のステージ! ライヴ・アクトとしても超一流の4人が、みんなをリヴィングから一瞬でスタジアムにワープさせるよ!!

 2018年の1年間、表舞台から姿を消していたコールドプレイが、年の瀬になって一挙3タイトルを携えて帰ってくる。それは、2015年の7作目『A Head Full Of Dreams』に伴うツアーを記録した2枚組のライヴ・アルバム『Live In Buenos Aires』と、そのデラックス・ヴァージョンにあたる2CD+2DVD『Live In Buenos Aires/Live In Sao Paulo/A Head Full Of Dreams Film』、そして日本限定のライヴ・アルバム『Live In Tokyo』だ。

 2016年3月から翌年11月までの間に122公演をこなし、ロック史上3位の収益を上げた今回の〈A Head Full Of Dreams Tour〉では、あえて小さな会場を選んだ前作『Ghost Stories』(2014年)のツアーから一転、スタジアムを舞台に、対極に振り切れたショウを披露。結成から20年が過ぎ、アルバム・セールスのみならず、ライヴ・パフォーマンスにおいてもこの世代最大のスケールを誇るロック・バンドとして、彼らはその実力を証明したと言えよう。

COLDPLAY Love In Tokyo ワーナー(2018)

 そんな4人が送り出す3つの作品のうち、日本のファンにとって気になるのはやはり『Love In Tokyo』だろうか。コールドプレイが東京ドームで日本公演を行なったのは昨年の4月19日だったが、本作にはそこで録音された音源を含む14曲のライヴ音源を収めており、全アルバムをバランス良く網羅した、ライヴ仕様のグレイテスト・ヒッツとしても楽しめるラインナップに。

COLDPLAY Live In Buenos Aires Parlophone/ワーナー(2018)

COLDPLAY Live In Buenos Aires/Live In Sao Paulo/A Head Full Of Dreams Film Parlophone/ワーナー(2018)

 一方、『Live In Buenos Aires』に収録されているのは、タイトル通りにアルゼンチンの首都でのツアー最終公演。ラテン・アメリカならではの盛り上がりのなかで、1年半に渡る旅の終わりをファンと祝っており、劇場公開された〈A Head Full Of Dreams Tour〉もまた、同じブエノスアイレス公演でエンディングを迎える。結成当時から彼らを知る映像作家のマット・ホワイトクロス(「9 Songs ナイン・ソングス」や「グアンタナモ、僕達が見た真実」など)が監督したこのドキュメンタリーでは、ロンドン大学での出会いまで遡り、クリス・マーティン(ヴォーカル/ギター/ピアノ)、ジョニー・バックランド(ギター)、ガイ・ベリーマン(ベース)、ウィル・チャンピオン(ドラムス)、そして〈5人目のメンバー〉たるクリエイティヴ・ディレクターのフィル・ハーヴィーのコメントを織り交ぜて、レアな映像と共に四半世紀の歩みを総括。大きな騒動とは無縁のバンドだが、だからこそ逆にさまざまな局面で彼らが味わった密かな葛藤を知るのは興味深く、地道な努力を積み重ねて現在地に到達したことが確認できる。

 そして残るは、同じくマットが監督した〈Live In Sao Paulo〉。ブエノスアイレス公演に先立つ11月8日にブラジルのサンパウロで行われたステージを、凝ったカメラワークや編集技術を駆使して美しい映像作品に封じ込めたもので、東京ドームのプラチナ・チケットを入手し損なった人たちにとっては、このマイルストーン的なツアーを体験できる貴重なフィルムだ。

 そう、U2を追いかけるようにして革新的なコンサートの在り方を掘り下げてきた4人だが、斬新で実験的な試みを採り入れながらも、大衆的な訴求性を重視するのがコールドプレイ流。そんな彼らならではの表現が大胆な進化を遂げており、融和や多様性を象徴するレインボー・カラーを基調に、アルバムのコンセプトをステージ演出に落とし込んで花火やパイロテクニクス、風船に紙吹雪……と、仕掛けをてんこ盛りにした満艦飾のスペクタクルを展開。かつ、ザイロバンドを用いた観客参加型のアプローチでエンターテインし尽くしている。

 そしてクリスは、無尽蔵のエネルギーを漲らせて長い花道を走り回り、踊り、観客にも歌わせる。いや、歌わずにはいられない曲が数限りなくあるうえに、近年踊れるナンバーも増えたことから、ここへきてコールドプレイはロックのパッション、ポップのスリル、ダンス・ミュージックの昂揚感をライヴ空間に融合させた感がある。ツアーが終了して1年が経過し、不穏さを増すばかりの世界に、そんな彼らが放つポジティヴィティーとオプティミズムはよりいっそう鮮烈な印象を刻むに違いない。

 

コールドプレイの作品。

 

コールドプレイのライヴ・アルバムを紹介。