前作の時点で確立していた9時から17時の作業ルーティンのもと、タイトル通り音の素材を一つずつ配置して全体を形作っていくという、これまでとは異なる手法が試みられた、5年半ぶり8作目。6つのギター・リフをミックスして美しいノイズの塔を築き上げた“Goniorizon”など、ミュージシャンという枠を越えて〈音の建築家〉であることを証明しているようだ。
タイトルは先に決まっていたというフェネスの5年半ぶりの新作『モザイク』。フラグメントとその集合体を示す言葉だが、アルバムのタイトルとしてだけでなく、収録された楽曲全体にそのイメージが踏襲されている。たくさんの細かな音が現れては交差し、ひとつの形をなしたと思えば大きなうねりとなって変化する、そんなアルバムだ。これまでのフェネスの音楽性はそのままに、ただこれまで以上に広大な空間が眼前に広がってくる。ジャケットのような渺茫とした、しかし音風景としてはやや荒涼としたトーンを帯びている。全7曲が全く違う音風景を見させてくれる秀作。日本先行で日本盤のみボーナス・トラック収録。