米カリフォルニアはオークランド出身のジャズベーシスト、アニーサ・ストリングスの来日公演が2025年1月30日(木)にビルボードライブ東京で開催される。ジャズを軸としながらも、ボーカリストや作曲家としてジャンルの枠にとらわれない活動を続けている、これからが楽しみなミュージシャンのひとりだ。
わずか13歳でプロとして活動を始め、華々しい学歴とともに進化を続けるアニーサの素顔に迫るべく、ライターの原田和典を質問者に本人へのメール取材を行った。アニーサから日本のリスナーへのお願いも綴られた以下のインタビューを読んで、ぜひ会場に足を運んでもらいたい。 *Mikiki編集部
ベイエリアで育まれた音楽的感性、ベースを手にした意外な理由
――来日公演が近づいてきました。どんな内容になりそうですか?
「伝統的なブラックアメリカンスタイルのショウになることでしょう。私の新旧の楽曲に加え、新鮮な解釈を施したR&Bやジャズのスタンダードナンバーも予定しています」
――今回の公演に同行するピアニストのブランドン・コルドバ、ドラマーのウェイン・マシューズについて教えてください。
「ウェインとは1年ほど前、別のドラマーの紹介で出会いました。楽器のセットアップ、豊かなスネアの音色も含めて、彼の几帳面なところが大好きです。ブランドンとは13年ほど前、カレッジで知り合ってから一緒に演奏を続けています。文字通り思いつくものは何でも弾ける奏者で、非常に抑制の利いたところと、信じられないほど解放的なプレイを行うところを持ち合わせています。彼と演奏すると、私は天国にいるような気持ちになるんです」
――まもなく新たなEP『The Calm』をリリースされるそうですが、どんな作品になっているのでしょうか?
「この作品では自己啓発、誠実であること、音楽の多様性を表現しました。〈誠実〉については、私が音楽家として最も大切にしていることでもあります」
――あなたが音楽に開眼したのはいつ頃でしょうか?
「本当に幼い頃から音楽に関心がありました。家族全員で一緒に歌ったり踊ったり音楽を聴いたり……それは子供時代の最も幸せな瞬間のサウンドトラックでした。
私はオークランドや、より大きなベイエリア(サンフランシスコの湾岸地域)で幅広いトレーニングを受けました。クラシック、ジャズ、ワールドミュージックなど地球上の数多くの地域から生まれた音楽を取り上げる若手音楽家のためのプログラムで育ち、SFジャズ・ハイスクール・オールスターズ、オークランド・ユース・オーケストラ、オークタウン・ジャズにも所属しました。
また、年上のきょうだいの音楽センスや、音楽を爆音で鳴らして走る車、BART(ベイエリアで運行されている高速鉄道)にいたダンサー、近所の大きなパーティーなどにも影響を受けて育ちました。多くの文化が集まり、音楽と料理を分かち合うメリット湖でのパーティーは、ベイエリアにおける〈人種のるつぼ〉の小さな象徴でした」
――初めて手にした楽器は何ですか?
「アップライトベースです」
――最初からベース奏者を志したのでしょうか?
「いいえ。私が12歳の時、〈なにか楽器を演奏してみたら?〉と母から言われてバイオリンを選びました。最初のクラスの時、何人かバイオリンではなく低音の弦楽器を担当しなければならなくて、先生が私をアップライトベースに選んだんです。きっと年齢の割に背が高かったからだと思います。先生は楽器の名前、そして数音の演奏の仕方を教えてくれました。そこから今に至るというわけです。
最初はアップライトベースでジャズやクラシックを演奏していました。その後、ファンク、ゴスペル、R&Bなどを学びたいと思った時、エレクトリックベースに切り替える必要があったため、以来、両方に取り組むようになりました」