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動物に戻す音楽

 味わい深いフォーク・ロックの“夕焼け”も、uminecosoundsとしても録音されていたものだ。

 「これも古い曲ですね。僕は昔、後藤くんと同じ事務所にいたんですけど、彼が売れていったのとは反対に、僕はクビになった。それを伝えられた帰りの電車で泣いてしまったんです。親に〈音楽をやる〉と言って、はるばる青森から上京してきたけど、結局挫折したなって。そのときの泣きって青森や東北の祭りみたいに爆発的なもので、もう慟哭だったんですよ。でも、その泣き叫ぶ感じを、これまでは表現できなかった」(古里)。

 「昔、シャムキャッツでウミネコサンライズ(古里がuminecosounds以前に率いていたバンド)と対バンしたときに、“夕焼け”をやっていたんですけど、ダントツに響く曲だなと感じたんです。歌詞とメロディーが一体化していて、聴くたびに毎回感動したんですよ。名曲すぎて、風呂敷きでやっていいのかなと思うくらい。でも、今回は良い具合に人間らしさ、臭みが出ているし、よかったなって」(藤村)。

 サイケデリックな“焚火”と低音を強く出した“ありえないね”は、着地点を見つけずに淡々と紡がれていくグルーヴが印象を残す。2曲の間に挟まれた“ぶらりと”は、アルバムのなかでとりわけラウドなパンク・ソングだ。

 「井上くんは“焚火”で弾くにあたって、〈あー、ずっと火が燃えている感じね〉と納得していたよね」(古里)。

 「“焚火”で雄文が弾いたベースラインはお経っぽいなと思う。自分も曲の後半は、線香を上げるようなイメージで叩きました」(藤村)。

 「この曲はライヴを観てもらうと、より伝わる気がする。火を見ていて、持っていかれそうになる体験ってあると思うんですけど、そういうのとは違い僕らの演奏は持っていこうとしないんです。ボケーっとさせるだけ。意識を連れ出すのではなく、それを体に戻していく。ただ動物に戻すための音楽というか」(古里)。

 「“ありえないね”のベースもずっと同じフレーズの繰り返しなんですけど、弾いている側としては、藤村のドラムに付いていっている感じなので、ぜんぜん飽きないんですよ。彼のドラムに揺らぎやうねりがあるからじゃないかな」(樋口)。

 「僕が“ありえないね”を作ったとき、最初はトータスみたいなポスト・ロックが頭にあったんです。でも、後藤くんは違うイメージだったみたいで、ここは彼に委ねてみました。ウィルコとかアメリカの壮大な大地を感じさせる音になっていて、なるほどなと」(古里)。

 アルバムの最後を飾るのは、バンドのファースト・シングルでもあった″流水”。どっしりと構えたアンサンブルを背景に、形を変えながら残り続ける記憶や感情を歌った名曲だ。

 「おさむさんの曲はレクイエムが多いと思うんですけど、“流水”と“まちのあかり”もそうだと思う。『えん』はレクイエムで始まり、レクイエムで終わる作品なんじゃないかな」(藤村)。

 絶望も欲望も希望も混濁した街で命を燃やし、やがては果てる人々に眼差しを向けた“まちのあかり”、別れを背景につれづれなる思索の旅を自然の営みに喩えて歌った“流水”。同じレクイエムでも、その視点がマクロとミクロで異なるのが『えん』の魅力といえるだろう。

 「風呂敷きで“流水”を作ったときは、その1曲で終わる可能性もあったと思うんだけど、なんとなく行き当たりばったりで転がっていき、アルバムに着いた。いろんな人と出会って、こうきたか、次はこうきたかという経験を楽しみつつ、気が付いたらこんな塊になっていました。『えん』はずっと聴かれ続けるアルバムだと思います。派手さはそこまでないけれど、何度聴いても気が付くところがたくさんあって」(古里)。

 「疲れ切った人に聴いてほしいアルバムですね」(樋口)。

 「この3人って、業種は違えど普段はざっくり言えば〈奉仕〉の仕事をしているんです。そういう3人ならではの音楽になったな。疲れてたり、悩んだりしている人に、ちょっと荒っぽいかもしれないけど優しい言葉を投げかけている」(藤村)。

 「ウミネコカレーのお客さんを見ていても、それぞれ本当にいろんなことで悩んでいるんですよ。そういう人が仕事の帰り道とか、休みの日にドライブしながらとか『えん』を聴いてみて、なんかわかんないけど、動物に戻れた気がして、元気が出た――そうなれば、いいなと思っています」(古里)。

 


LIVE INFORMATION
古里おさむと風呂敷き
1stアルバム『えん』リリースツアー

2025年3月7日(金)宮城・気仙沼 くるくる喫茶うつみ
開場/開演:18:30/19:00
出演:古里おさむと風呂敷き/藤田岳
DJ:イガリヒロアキ
出店:畑のsoup屋さん
前売・当日:3,000円+1d(限定20名)
チケット予約:hello@mamechoudai.jp

2025年3月8日(土)茨城・つくば aNTENA
開場/開演:18:00/18:30
出演:古里おさむと風呂敷き/北里彰久
DJ:八福
出店:PEOPLE BOOKSTORE/chitO (food)
一般/学生:2,500円+1d/1,500円+1d ※当日券のみ、中学生以下無料
企画:natunatuna

2025年4月11日(金)兵庫・神戸 旧グッゲンハイム邸
開場/開演:18:30/19:00
出演:古里おさむと風呂敷き/Turntable films/東郷清丸
出店:ワンダカレー
前売/当日:3,500円/4,000円
チケット予約:https://forms.gle/AcGmz2YV4gzLo2X67

2025年4月12日(土)愛知・名古屋 ブラジルコーヒー
開場/開演:18:00/18:30
出演:古里おさむと風呂敷き/THE PYRAMID/てんしんくん
前売/当日:3,000円+1d/3,500円+1d
チケット予約・お問い合わせ:nqlunch@gmail.com/0523215223

2025年4月13日(日)静岡・藤枝 大慶寺
開場/開演:15:00/16:00
出演:古里おさむと風呂敷き/Gotch (Band Set)
前売:4,500円
チケット予約:https://t.livepocket.jp/e/enn413

2025年4月24日(木)東京・下北沢 440
開場/開演:18:30/19:00
出演:古里おさむと風呂敷き and more
前売/当日:3,500+1d/4,000円+1d
チケット予約:https://t.livepocket.jp/e/440250424