レッド・ツェッペリン周辺がにわかに騒がしくなってきた。長らく制作されていたバンド初の公式ドキュメンタリー映画「Becoming Led Zeppelin」の公開がアナウンスされて以降、我々リスナー側のツェッペリン熱も再び上昇。音源はもちろん、彼らが抱える膨大なアーカイブに触れる機会も増えてきたように思う。
そんな高揚感が押し寄せる2025年は、レッド・ツェッペリンについて学び直す絶好のタイミングではないだろうか。以下に紹介する書籍は、バンドの関連作品を網羅したディスクガイドから、貴重カットを収めた公式本、メンバーの人間性や使用機材を深く知ることができるコアなものまで、ツェッペリンをあらゆる角度から吸収することができるアイテムばかりだ。
まず紹介したいのが、総合音楽家の和久井光司が責任編集を務めた最新ディスクガイド「レッド・ツェッペリン完全版」。アルバム、シングル、映像作品、メンバーのソロ作から参加作までを余すことなく掲載しており、まさにツェッペリンの全貌を捉えたガイドブックの決定版と言えるだろう。

また、直近で刊行された書籍としては、レッド・ツェッペリンのドラムスにして〈史上最強のドラマー〉とも称されるジョン・ボーナムの評伝「ビースト――ジョン・ボーナム評伝 レッド・ツェッペリンを支えたドラムスの野獣」もオススメしたい。
1980年、32歳という若さで亡くなったボーナム。その短くも濃密すぎる人生を詳細に書き留めたこの評伝には、ニュー・ヤードバーズからツェッペリンにいたるまでの血気盛んな時期、アルコールや薬物に依存した晩年まで、ボーナムが生きた証が刻まれている。デイヴ・グロールの序文も含めて、ツェッペリン/ボーナムを愛する者ならマストバイな一冊だ。

シンコーミュージックから3月17日(月)に発売予定の「ザ・ペイジ・ブック」も、ツェッペリンファンなら要チェックなアイテムだ。同社はこれまでにも「ザ・ボンゾ・ブック」「ザ・ジョンジー・ブック」を刊行し、いずれも使用機材や実際の活用方法を徹底的に分析・解析。荒々しくも繊細なツェッペリンサウンドの秘密を解き明かす人気シリーズとして好評を博している。
ジミー・ペイジの愛機であり象徴とも言えるギブソン・レスポールをはじめ、ペダルなどの周辺機材までを知るということは、すなわちツェッペリンサウンドの核心に迫るということ。少々マニアックな内容にはなるだろうが、ペイジ自身もまたギターマニアであることを踏まえれば中途半端な探求などできるはずがない。そういった点でも、本書は信頼のおける一冊になっているに違いない。



以降は過去に出版されたツェッペリン関連本をいくつか紹介していきたい。個人的に特にプッシュしたいのが「LED ZEPPELIN by LED ZEPPELIN」で、数少ないバンドお墨付きのオフィシャルブックだ。2018年の結成50周年を記念して刊行されたこの本は、ペイジ、ロバート・プラント、ジョン・ポール・ジョーンズが写真や資料を提供し、編集作業にも携わった〈レッド・ツェッペリンによるレッド・ツェッペリンの本〉と呼ぶにふさわしい一冊となっている。

ツェッペリンが全盛期を過ごした1970年代は、とにかくフォトジェニックなバンドが多かった。キッス、クイーン、エアロスミス、ディープ・パープル、AC/DC……挙げればキリがないが、いずれもアルバムジャケットやバンドロゴを用いたTシャツがいまも人気であることを考えると、いかにビジュアル面が重要だったかが伺える。
そんな中でもツェッペリンは特に写真映えするバンドだった。シンコーミュージックから出ている「レッド・ツェッペリン ライヴ・ツアー・イン・ジャパン 1971 & 1972」は、そのタイトル通りツェッペリンの初来日(1971年9月)と翌年の再来日(1972年10月)にフォーカスを絞り、希少なモノクロ写真から貴重カットまでを掲載、特に初来日時はアルバム『Led Zeppelin IV』のリリースを目前に控えたタイミングで、各メンバーのポテンシャルも絶頂期を迎えていた。心技体すべてが輝いていたツェッペリンを堪能する意味でも、「LED ZEPPELIN by LED ZEPPELIN」とあわせて揃えてほしいところ。

〈もっとテキストを読みたい〉という方には、2015年刊行の「CROSSBEAT Special Edition レッド・ツェッペリン 1974-1982」を紹介したい。『Presence』『In Through The Out Door』『Coda』のリマスター盤がリリースされるタイミングで編まれた同書には、これら3枚に『Physical Graffiti』も加え、バンドの中期から後期にかけての活動を徹底的に検証。各作品のクロスレビュー、プラントの発掘インタビュー、さらには2015年6月に行われたリマスター盤の試聴イベントにおけるペイジのQ&Aも収録しており、2012年の再結成から続いた当時のツェッペリン熱を体験することができる。

レッド・ツェッペリンの偉業は、音源だけでは到底理解することができない。膨大な資料を拾い集め、それらを様々な角度から捉え直すことで、彼らの魅力は何度でもアップデートされていく。ここまで紹介した書籍を読み倒して、改めてレッド・ツェッペリンが生み出した熱狂に酔いしれてみてほしい。