祝・デビュー10周年!ということで、2015年6月までの1年のあいだにさまざまなアニヴァーサリー企画を展開していく木村カエラ。その一環として、今夏にはプライヴェート・レーベルのELAからのシングル“OLE!OH!”とベスト・アルバム『10years』という2つのマテリアルをリリースした彼女より、ニュー・シングル“TODAY IS A NEW DAY”が届けられた。先述の“OLE!OH!”が彼女のポップ・サイドなら、今回はロック・サイド。過去にもカエラの楽曲を多く担ってきた盟友の渡邊忍ASPARAGUS)とのコラボ・ナンバーで構成されており、自身のパブリック・イメージのひとつ──エネルギッシュ&スポーティーな木村カエラ像を受け継ぎつつ更新してみせた、会心の一枚に仕上がっている。

木村カエラ TODAY IS A NEW DAY ELA/ビクター(2014)

 表題曲“TODAY IS A NEW DAY”は疾走するバンド・アンサンブルの上で、昨日までとは違う〈新しい今日〉の到来を高らかに祝福するナンバー。シンプルに選り抜かれた言葉の連なりがポジティヴなヴァイブレーションを生み出し、昂揚感を高めながら淀みなく駆け抜けるメロディーがストレートに胸を揺さぶる。カエラらしい王道感を備えているのだが、そこはかとなくクラブ・ミュージックからの影響が感じ取れるソリッドなビートがフレッシュな質感を与えてもいる、次の10年の幕開けを告げる新たなアンセムとなりそうな一曲だ。

  カップリングの“c'mon”は、さらにラウドかつヘヴィーなサウンドを轟かせる完全英語詞のメロコア・チューン。渡邊忍の持ち味を真っ直ぐに投影したと思しき鋭利なギター中心の音像と、カエラのヴォーカルとがせめぎ合いながら、楽曲を快くドライヴさせ、これまたシンプルに前へ進まんと宣言するリリックが聴き手を鼓舞する。とことんアグレッシヴなアプローチを見せるナンバーだが、そんな音であってもしなやかに乗りこなし、ポップに転化させるのが木村カエラ。その無二のセンスが明確な形でここに表れていると言えるだろう。

 そして3曲目は、“Yellow”(2007年)の牛尾憲輔agraphLAMA)によるリミックス・ヴァージョン。ソロ作などでは叙情的なリスニング・テクノを展開している牛尾だが、ここでは力強い4つ打ちのビートを持ち込み、ロッキッシュな原曲を換骨奪胎。トランシーなエレクトロニック・ディスコに仕立てている。石野卓球とのコラボなどを通して、彼女が断続的に提示しているダンス・ミュージック路線の最新回答、といったところだろうか。ともあれ、この音を待っていたというファンも少なくないはずだ。

 本作のリリース直後に木村カエラは横浜アリーナでの2デイズ・ライヴを開催するが、この新曲群は会場の空気を沸騰させる起爆剤となるに違いない。そして10周年企画はまだまだ前半戦。この先の展開にも大いに期待しておこう。

【参考動画】木村カエラのニュー・シングル“TODAY IS A NEW DAY”
初回盤に付属するDVDのダイジェスト映像

 

 

▼木村カエラの近作を紹介

左から、2013年のコラボ・カヴァー集『ROCK』、2014年のシングル“OLE!OH!”(共にELA/ビクター)、ベスト盤『10years』(コロムビア)
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▼関連作品

LAMAの2012年作『Modanica』(キューン)
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 ここでは渡邊忍の近年の関連作を紹介。まず、木村カエラの出産後初のアルバムとなった2011年作『8EIGHT8』(コロムビア)では全曲をプロデュース。彼女のバンド・メンバーとライヴを意識した一枚を作り上げます。2012年は本隊のASPARAGUSで約4年ぶりのフル作『PARAGRAPH』(3P3B)を発表し、2013年はMEGの10作目『CONTINUE』(スターチャイルド)で“WE LIVE, WE LOVE”を編曲。シンセベースを効かせたポップな一面を披露します。そして、2014年は1月にメロコア界の後輩、FOUR GET ME A NOTSの最新作『AUTHENTIC』(キング)をプロデュースし、6月には盟友BACK DROP BOMBのトリビュート盤『The Broccasion-music inspired by BACK DROP BOMB-』(cutting edge)にも参加しています。 *bounce編集部
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