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トータルで曲を良くすることが最優先

――柴崎さんは作曲、アレンジの際、ギタリストとしての自分をどう捉えているんですか?

柴崎「優先順位はかなり下のほうかもしれないです。やっぱりトータルで曲を良くすることにプライオリティを置いているし、ギターは要素のうちの一つに過ぎないので。制作の最後のほうで〈もうちょっとがんばればよかったかな〉と思ったり、〈ギターでカッコよくできる余地がある〉と思って弾き直すこともあります」

上原「そうなんですね」

柴崎「うん(笑)。やっぱりカッコいい曲じゃないと売れないし、ギターだけ良くても意味がないので。〈ギターがカッコいい〉と言われたらうれしいけど、そういう人は少ないですから」

上原「前からよく言ってたんですけど、ギターソロが入っていてもいなくても、いいものはいいんですよ。ギターソロがあるから聴かれないってこともないし、大事なのはカッコいいかどうかなので。

多分ですけど、ミュージシャンだけなんですよ、そういうことを気にしてるのは。〈ギターソロは古い〉とか〈流行ってない〉とか、そんなことリスナーは気にしてないですから」

柴崎「気に留めてない(笑)」

上原「ドラムのサウンドなどもそうですよね。キックにもスネアにも時代の流行りがあるけど、リスナーはそんなに気にしてないと思うので」

――なるほど。ちなみに現在のWANDSのサウンドメイクについては、どんなことを意識していますか? WANDSが培ってきた音を踏まえつつ、〈そのまま〉やっているわけでもないと思うのですが。

柴崎「そうですね。滲み出ちゃうものはそのまま滲んでいいと思ってるんですけど、わざわざ音像を古臭くする必要もないので。基本的には信頼しているミックスエンジニアのセンスに任せているんですけど、必ずしも最新であることにはこだわってないんですよ。他の人たちがやってることに便乗しても埋もれるだけだし、自分たちの感覚を信じるほうがいいのかなと」

上原「そうだと思います」

――新しさを求めると、数年経つとすぐに古くなりますからね。90年代には90年代の音があったし。

柴崎「90年代は、意外と音が荒れてた気がするんですよ。ストリーミングで90sの曲を流してると、ドラムのループのなかに〈サーッ〉というノイズが混じってたりするので」

上原「騒がしい音なんですよね」

 

「コナン」ED曲“Shooting star”作詞作曲の背景

――“Shooting star”は煌びやかシンセサウンド、ヘビーなギターサウンドが響き合うミディアムチューン。リズムのアレンジも凝っていて、テクニカルな要素もあるのかなと。

柴崎「この曲はかなり以前から存在していた楽曲なんです。それこそWANDSが再始動する時期には既にあって。今回のアルバムの制作に入ったときに、過去に使ったモチーフをいろいろ聴いているなかで、〈これ、上原に歌ってもらったらいいんじゃない?〉と思ったんですよね。ファルセットが何か所かあるんですけど、それを含めて再構築しました」

上原「デモの段階から少し歌詞も乗ってて。その韻を活かしているところもありますね」

――〈叶わぬ理想 嘆いてないで/大切なモノ愛したい〉もそうですが、印象的なフレーズも多くて。歌詞のイメージに関してもやり取りはあるんですか?

柴崎「そこは丸投げですね。どんなふうに曲を解釈して、どんな歌詞を乗せてくるのか楽しみにしてる感じです」

上原「歌詞は大変なんですけどね。(作詞の)工程を楽しめたことは1回もないし、〈歌ってる人が書いたほうが説得力あるよな〉と思うから人に任せていないだけで、ちょっと義務感みたいなところもあって(笑)。がんばって歌詞を書いて、出口が見えてきたときだったり、〈なかなかいい歌詞が出来たじゃん〉みたいなときはうれしいですけどね。〈俺、才能あるんじゃない?〉とか〈こんなフレーズ、どうやって思い付いた?〉って自分で思うこともあるし。そういうときは〈がんばってよかった〉と思います」

柴崎「すごいね(笑)」