
最後の日本ツアーを控えるシンディ・ローパーの来日記念盤が登場!!
エアロスミスにキッスにエルトン・ジョン……と、ここ数年ヴェテラン・アーティストたちが相次いでツアー活動から引退している。現在71歳のシンディ・ローパーもまた現在キャリア最後のツアーとされる〈Girls Just Wanna Have Fun Farewell Tour〉を敢行しており、4月に来日する予定だ。
実に通算15回目となるこの日本訪問を機に、海外では昨年公開されたドキュメンタリー映画「シンディ・ローパー:レット・ザ・カナリア・シング」(アリス・エルウッド監督)の本邦公開も決まった。シンディ自身はもちろんのこと、家族や彼女をよく知るアーティストたちとのインタヴュー及び映像で、幼少期からの歩みを辿るものだ。同時に映画のサウンドトラックが来日記念盤としてリリースされるが、アナログ盤でのみ発表された米国盤に対し、CDで登場する日本盤には6曲が追加収録され、ソロ・デビュー前に在籍していたバンド=ブルー・エンジェルの曲を含め、ほぼ全アルバムを網羅するベスト盤と見なすことも可能だろう。ほかにも、ちょうど日本に滞在している頃に〈ロックの殿堂〉入りの成否も判明するとあって、話題が尽きないいまこそ、シンディの40余年に及ぶ歩みを振り返るには絶好のタイミングなのかもしれない。
そう、彼女が長い下積みを経て30歳にしてファースト・アルバム『She's So Unusual』を発表したのは83年のこと。サウンドこそニューウェイヴど真ん中のポップ・ロック路線だったものの、同時期に現れた他の女性シンガーたちとは一線を画す反骨精神とエキセントリシティーを、ヴォーカル・スタイルにもファッションにも投影していたシンディは、まるで自分をなかなか受け入れてくれなかった音楽業界にフラストレーションをぶつけているかのような“Girls Just Want To Have Fun”を筆頭に、続々ヒットを記録。女性アーティストとしては史上初めてデビュー作から4つのシングルを全米TOP 5に送り込み、第27回グラミー賞で〈新人賞〉に輝くことになる。
続いて、多数のゲスト(ナイル・ロジャース、エイドリアン・ブリュー、ビリー・ジョエルほか)を交えて制作した2作目『True Colors』(86年)でもファーストの志向を踏襲し、シンディのシグネイチャー・ソングとなる表題曲が全米1位を獲得するのだが、サード・アルバム『A Night To Remember』(89年)は、ヒット・シングル“I Drove All Night”に象徴される、よりアダルトなポップ・アルバムに仕上げた。ここにきて80年代から90年代に時代が変わり、シンディ自身の身辺も結婚を機に変化するなかでリセットの時期を迎え、4作目『Hat Full Of Stars』(93年)で路線を刷新。次の『Sisters Of Avalon』(96年)にかけて、オルタナティヴの台頭と歩調を合わせて音楽性を広げていく。前者ではDJのジュニア・ヴァスケスを、後者ではマーク・ソンダーズを共同プロデューサーに選んで、ヒップホップやエレクトロニカの要素を消化。歌詞でも人種差別、あるいはDVや人工中絶といった女性にまつわる問題など社会的な題材を扱い、ソングライターとしての評価を高める契機になった。
このあとクリスマス・アルバム『Merry Christmas ... Have A Nice Life』(98年)を挿んで2000年代に入ってからの彼女は、オリジナル・アルバムとカヴァー集を代わる代わる送り出してきた。20世紀のスタンダード曲にフォーカスした『At Last』(2003年)に始まり、『Sisters Of Avalon』よりもパーソナルな趣のオリジナル・アルバム『Shine』(2004年/当時は日本だけでリリース)、アメリカーナ志向でまとめたセルフ・カヴァー集『The Body Acoustic』(2005年)、ダンス音楽に傾倒した『Bring Ya To The Brink』(2008年)、ブルースを歌う『Memphis Blues』(2010年)、古典的カントリー・ソングを独自に解釈する最新作『Detour』(2016年)という具合に。そもそも彼女は自作曲にこだわる人ではないのだが、こうして見ると近年のシンディは、米国のルーツ音楽にオマージュを捧げながら、シンガーとしての実力を見せつけてきた感がある。また、『The Body Acoustic』ではジェフ・ベックやPuffy、『Memphis Blues』ではBB.キングやアラン・トゥーサン、『Detour』ではエミルー・ハリスやアリソン・クラウスをゲストに迎えており、シンディの人脈の広さを物語る、コラボレーション三昧の時代でもあった。
他方でオリジナル・アルバムとしてはもっとも新しい『Bring Ya To The Brink』での彼女は、ベースメント・ジャックスやアクスウェルといったダンス・アーティストたちと組み、フロア・バンガーの数々をレコーディング。実験欲を失っていないことを示し、第51回グラミー賞のダンス/エレクトロニカ・アルバム賞候補にも挙がったものだ。
同作が登場した2008年と言えば、かねてから社会的マイノリティーの権利擁護に情熱を注いでいた彼女が、ホームレスのLGBTQの若者を支援する基金〈トゥルー・カラーズ・ユナイテッド〉を設立した年でもある。現在に至るまでアクティヴィストとしての活動にも忙しいシンディ。フェアウェル・ツアーは8月に終了するがミュージシャン業から引退するわけではなく、彼女の飽くなき創造欲求を伝える今回のサントラを聴く限り、この先もまだまだたくさんの音楽を期待していても良さそうだ。
シンディ・ローパーのアルバムを一部紹介。
左から、83年作『She's So Unusual』、86年作『True Colors』(共にPortrait/Epic)、 89年作『A Night To Remember』、93年作『Hat Full Of Stars』、2008年作『Bring Ya To The Brink』(すべてEpic)
左から、シンディ・ローパーの日本独自企画のベスト盤『Japanese Singles Collection -Greatest Hits-』(ソニー)、シンディが参加したシェールの2023年作『Christmas』(Warner )
INFORMATION
映画 「シンディ・ローパー:レット・ザ・カナリア・シング」日本公開決定!
4月11日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国劇場にて
配給:カルチャヴィル
〈シンディ・ローパー フェアウェルJAPANツアー〉4月開催!
2025年4月19日(土)大阪・Asueアリーナ大阪
2025年4月22日(火)東京・日本武道館
2025年4月23日(水)東京・日本武道館
2025年4月25日(金)東京・日本武道館