コラム

秋山ちえ子 『かわいそうなぞう』

多くの人に知ってほしい大切な悲しいお話

秋山ちえ子 『かわいそうなぞう』

 終戦記念日の8月15日、ラジオで朗読され続けてきたお話しがある。終戦間近の上野動物園で、戦争のために餓死させられた3頭の象と、動物園の飼育係たちを描いた実話に基づく物語「かわいそうなぞう」。半世紀近くに渡ってこの朗読を続けてきたのは今年98歳となるジャーナリストの秋山ちえ子さん。二度と戦争をくり返してはいけない、というシンプルで大きなメッセージを毎年同じ日に、変わらず伝え続けている。この朗読が2008年に録音・CD化され、戦後70年を来年に控えた今、再発売となった。

秋山ちえ子 かわいそうなぞう GT music(2008)

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 第二次世界大戦を記憶している世代として平和の願いを込めて朗読を続け、多くの人たちに知られることとなったこのお話しは、学校や図書館で読まれ続けアニメ化やTVドラマ化もされてきた。CDには、企画に賛同したシンディ・ローパーが英語版「Faithful Elephants」として朗読したものも収録されており、「原爆を知っている日本人には、それを話す責任がある」と語る秋山さんの思いが形になっている。

 やさしい語りからは子どもたちにどうしても伝えておかなければならないという気迫が感じ取れる。子どもたちの脳裏に、聞いたことがある悲しいお話として記憶が残ればきっとそれでよくて(理解するのは後からでもいいと思う)、どうしても伝えていかなければいけない大事なことだと、朗読をやめない秋山さん、そして関わっている方々の思いあっての再発に大きな意味があるし、その意味を持続させていかなければ。まずは秋山さんと子どもたちのあいだの世代である自分たちがどうするのか、身が引き締まる。

 たしかに耳を覆いたくなるような悲しいお話。それでも、かわいそうという気持ちが戦争をくり返してはいけないという純粋な思いになると信じている。今、もう一度広がっていくために再発された、大切な悲しいお話しがあることをたくさんの人に知ってほしい。

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