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鈴木慶一

手癖から逃れる鈴木慶一の作曲法

佐藤「あの、慶一さんの曲を昔からよくコピーしてるんですけど、たまに、コード(和音)がない曲がありますよね。メロディーと、もう一つのメロディーだけがあるみたいな。あれはどういう発想なんですか」

鈴木「最初にいきなりメロディーを作って、それに対応するラインを考えていく。対位法的な感じだね。和音があったとしても2音とか。メジャーかマイナーかも判断できないような」

佐藤「そういう感覚で曲をつくるようになったのは、いつ頃からなんでしょうか」

鈴木「初めて映画音楽をやったときかな。『うずまき』(2000年公開)あたり。

それから、たとえば一個のブーンっていう音、その倍音が目立ったような音が一個あったとしたら、もうそれだけでいく。そこからだんだんコード感とか、音階が聞こえてくるのを待つ。ポップミュージックのエリアではないものをあえてやるというような、そういう感じだと思う。

今回の優介くんのアルバムも、コードが前面に出るような曲はあんまりないよね。だから最後の曲(“そして音楽はつづく”)がすごく光るんだよ」

佐藤「ああ、うれしいです。でもアルバムの最後の曲って、むずかしくないですか? どう締めくくるのか……」

鈴木「これが最後の曲かな、っていうのは、作っているうちになんとなくわかってくる。今回の、あの終わり方はすごくいいよ。ちょっとほっとする」

佐藤「ありがとうございます。ライダーズのアルバムだと、慶一さんの曲が最後を飾っているものは、アルバム全体を総合するような印象があって、ああ、1枚のアルバムを聴いたぞ、っていう感じがするんです。実は今回の制作中も、ライダーズをいろいろ聴き返してたんですけど」

鈴木「最後は引き受けた、って感じだね(笑)。初期の頃は、次のアルバムの予兆になるような曲を選んで最後にしていた。そこに次のモードを匂わせておく」

佐藤「予告編的な、今でいうマーベル映画みたいな手法を、音楽でもうやっていたんですね(笑)」

――優介くんは、そういう予告編的な曲は今回あったりするんですか?

佐藤「特に意識はなかったですけど……でも、もう次のアルバムも作り始めていて。曲だけはいっぱいあるんです」

鈴木「毎日曲作ってるんじゃないの(笑)? そんな感じがする」

佐藤「本当に毎日作ってます(笑)。ほとんど趣味ですね。でも、慶一さんもそうなんじゃないですか」

鈴木「最近はね、寝起きに作るのが多い。夢の中で、出来た!となって飛び起きて録音するんだけど、でも聴き返すとあんまり良くない(笑)。でも捨てないで続けてみる。時間の無駄遣いかもね」

佐藤「(笑)。最近はピアノとギター、どっちで作るのが多いですか」

鈴木「ピアノだね。バンドとかユニットだとギターが多いんだけど。個人的な作品づくりは、まずは鍵盤でメロディーだけをつくる。そこでコードは考えてない。和音は後から考える」

佐藤「慶一さんの曲を聴いていて思うのは、手癖的なものが全然ない感じがするんです。常にどこか新しいというか」

鈴木「いや、手癖はあるんだよ。でも、そこから逃れないと、と思ってる」

佐藤「そういう意識は、やっぱりあるんですね。結構、そこで安心しちゃう人もいるじゃないですか。これが自分のカラーだっていう」

鈴木「カラーは持ちたくないね。でも、自分のそういう手癖っていうのは、自分じゃ気づけないんだよ。人から言われてむっとする(笑)。自分にね」

佐藤「そこに対する抵抗はありますね。でも、キャリアのある人ほど、自分節というか、シグネイチャー的なイメージを守ろうとする人も多いと思うんですけど、やっぱり慶一さんこそ多様性というか、複数的っていうか……」

鈴木「あとは、バンドとかユニットだと、一緒にやる相手の声に合わせるっていう感覚はあるね」

佐藤「ああ、それはよくわかります。プロデュースだったり、誰かに提供する曲の場合は、その人の声に向けて作るので、そういう曲は自分では歌えないですね」