
苦戦して作り上げた無国籍ダンスミュージック
yuma「実際の制作順序で言うと、最初に仕上げたのは〈ショータイム〉で使う“Concordia”でした。先に曲を書いて、その後、逆算の発想でフレーズを抜いていき、各エリア用のオブジェクトを用意したんです。ただ、レコーディングの段階でフレーズを抜くことが決まっていたので、とにかく大変でしたね(笑)。最初はメインの曲を作ったら、それを切り取って使えばいいかと思っていたんですけど、そうもいかず。300フレーズぐらい別々で録音することになって」
剣持「そうしないとぶつ切りになってしまうんです。音の減衰がないまま次のフレーズに行ってしまうので、リバーブでごまかしたくもないし、別々に録らなきゃダメだと。yumaさんが作った譜面、すごかったんですよ。普通のスコアではなく、フレーズごとに細かく書いてあって。今まで見たこともないような(笑)」
yuma「大変でした(笑)。僕もああいう曲の書き方は初めてだったので」
剣持「僕がプロジェクトについて一番思っていたのは、繰り返しになりますが、音楽をBGM的にしたくなかったということ。テンションが上がって楽しいなと感じるときって、やっぱりダンスミュージックだと漠然と思っていたんです。お祭りの音楽というか。インスタレーションでダンスミュージックがメインで流れることはあんまりないので、そこは派手にやってほしいと思っていました。yumaさんに直接ディレクションしたわけではないですが、きっとそう解釈してくれると思って依頼したんです」
yuma「僕の中では、来た人が〈ああ、いいショーを観たな〉と思える音楽ということが最初にありました。オーケストラやピアノを使いつつ、最後にどう記憶に残る形で盛り上げようかと考えたとき、ラヌちゃんのボーカルがぴったりだなと。今までも僕のアルバムで歌ってもらっていたし、歌モノというより楽器の一部として曲の後半に入ってくるといいなと。
プラス、ウドゥ(ナイジェリアの民族打楽器)を入れたことで曲のゴールが見えました。プリミティブな踊りの感覚というか、日本のお祭りの感覚がありつつ、どこの国のものか安易にわかる音楽にはしたくなかったので、無国籍感を出したくて」
剣持「たしかに、〈無国籍〉ということは結構話し合いましたね。オーセンティックなものにしない、オルタナティブな音楽にしようって」

いい曲をベストな音で届けたい
――当初からリリースを見据えて作曲したのでしょうか?
yuma「もともとは100%、インスタレーションのために作りました。でも、音楽単体でも聴いてもらえる強さがある曲になったので、剣持くんと話して、リリースしたいよねって。最初はリミックスも考えていませんでした」
剣持「せっかくいい曲ができたから、いい音で聴いてほしいという思いが根底にありましたね」
yuma「曲ができてきた段階で、自分の中では手応えがありました。もしリリースされなかったら、音楽を100%の出来の状態で聴いてもらう機会がないわけじゃないですか。ビーチの音響は限界があるので。
実際、現地で聴いたら別物で、レコーディング/ミックスエンジニアのmolmolさん(佐藤宏明)に音響を調整していただいたんですが、ものすごいEQになっていて。特定の周波数ですごく抜けてくる帯域があったり、スピーカー間の距離もすごく遠かったので高域のディレイが気になったり、かなり過酷な状況でミックスしてもらいました」
剣持「ビーチだと壁がないので、反射がなかったり、風で流されたりもするんですよ。だからインスタレーションのときはスタジオでミックスするのとだいぶ違う仕上がりになっていました」
yuma「作曲家としては、ベストな状態で聴ける状況を届けたいという思いがあって。今回リリースしたいと思ったモチベーションはそれですね」