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〈仕事〉としての音楽制作で培った作家性

――クライアントワークはあくまで収入を得るための仕事で、アーティスト活動でこそクリエイティビティが発揮できると考える人もいると思いますが、クライアントワークにおけるクリエイティブな面でのメリットは、どんなところにあると思いますか?

剣持「yumaさんからしたら、今回のプロジェクトはもともと僕がクライアントだったわけですよね。でもその中で、さっき言っていたように一人でできないことのエッセンスを僕がどれだけ与えられるかということが、クライアントワークという意味では醍醐味だと思っていて。普段だったらやらないけど、こういうことを試してみたら面白いんじゃない?ってアイデアを出したり、そういう情報をどれだけ渡せるかで、yumaさんのアーティストとしての価値やバリエーションが増えていくのはいいことだと思います。

むしろ広告の仕事だからこそ、より新しいものを作る動きが必要になるので、実験的なエッセンスを入れることは、僕はとても必要な作業だと感じていつも仕事をしています。広告のポイントを押さえた上でチャレンジングな作品に仕上げられるのであれば、それはクライアントワークのメリットだと思いますね」

yuma「収入を得るためのお仕事であるとはいえ、自分の血が通っていないものを作りたいとは思えないんです。人によって〈これは自分の名前で出したくない〉という仕事はあるでしょうし、いろんな事情が重なったりしたせいで、自分もごく稀にそういうことがあります。でもCMだろうが劇伴だろうがオリジナルだろうが、自分の仕事は血が通っていて納得できているものがほとんど。〈クライアントワークだし、95%しか満足していないけど、これぐらいでいいか〉という考えで仕事をしたくはないですね」

――たとえばパトロンがお金を出してくれて何でも制作できる状況と、現状のようにクライアントワークとアーティスト活動を並行していくのと、どちらがいいですか?

yuma「難しい質問だな……(笑)。僕は最近になってやっと自分の作家性というのが見えてきたかなと思うんです。いろんなクライアントワークを通して作家性が出来上がってきたというか。

2008年に23歳でデビューしたばかりの頃は、イルマ・レコードというハウス系のレーベルから最初のアルバム(『SOUND MULTIPLY』)を出したんですが、小さい頃からクラシックピアノをやっていて、大学ではクラシックとジャズの作曲を主に勉強していたので、基軸としては〈ハウス〉〈クラシック〉〈ジャズ〉の3つが強かった。

けれど、広告音楽はとにかくいろんな曲を書きまくらなきゃいけない。それをひたすら15年やり続けてきて、やる機会がなかったジャンルの曲も作ることになりました。たとえばヒップホップは好きで聴いてはいましたが、自分で作る機会はなかなか無かった。でもクライアントワークでやらなければならない機会が出てくると、一度引き受けたからには、ヒップホップを主戦場にしている人たちのクオリティに追いつくものを作らないとならない。でないと、もうそういう仕事がもらえなくなってしまいますからね。

僕は20代から30代前半にかけて、そういうことを続けてきました。クライアントワークに応えることが面白かったので、それを続けていたら、小さな経験が積み重なって自分の作家性になってきた。それは今も変化している途中だと思います。そういう意味では、クライアントワークがなかったら僕は今のような作風にはならなかった。もっと偏った作曲家になっていたと思う。ここまでいろんなジャンルの要素を取り入れた曲が書けるようになったのは、クライアントワークのおかげです。回り道はしましたが、もしアーティスト活動だけをやっていたら、今のようなキャリアや作家性は手に入らなかったと思います」

――まさにジャンルを越境する〈無国籍〉なアーティストと言いますか。

yuma「なんかかっこいいですね(笑)」

剣持「そう考えると〈無国籍〉というのは、クライアントワークを通じてアーティストとしての作家性を形作ってきたyumaさん自身のユニークさを表すキーワードでもあるかもしれないですね」

 


RELEASE INFORMATION

yuma yamaguchi 『Concordia』 LISZTOMANIA INC.(2025)

リリース日:2025年4月2日(水)

■配信スケジュール
2025年4月2日(水)“Concordia”・“Concordia” Music Video
2025年4月16日(水)“Concordia (Yuta Bando Remix)”
2025年4月30日(水)“Concordia (bastiengoat Remix)”
2025年5月14日(水)“Concordia (Dorian Concept Remix)”

■参加ミュージシャン
Vocals: ラヌ 
Piano: yuma yamaguchi
Strings: 門脇大輔strings
1st Violin: 門脇大輔 山本大将 友清麻樹子 中島優紀 河裾あずさ 浮村恵梨子
2nd Violin: 大嶋世菜 藤縄陽子 小林明日香 大谷舞
Viola: 西村知佳子 高橋輝 亀田夏絵       
Cello: 村中俊之 宮尾悠
Contrabass: 一本茂樹 倉持敦
Flute & Piccolo: 多久潤一朗 
Flute: 片山士駿 
Oboe: 最上峰行 
Clarinet: 中ヒデヒト 
Percussions: さのみきひと
Rec Engineer: 横山令       
Mix / Mastering Engineer: 佐藤宏明 (molmol)
Music Producer: 剣持学人

■アートワーク
buggy, Shunsuke Kosaka

■Music Videoクレジット
Director: Shogo Tominaga (LQVE)
Dancer & Arrangement: NOMEN tokyo
Choreography Assist: CoCo (DT☆DS)
Cinematographer: Tadashi Watano (LQVE)
Film Producer: Sota Tamura (LQVE)

 


PROFILE: yuma yamaguchi
YUGE inc.所属の作曲家。アニメ「時光代理人」や映画「新幹線大爆破」などの劇伴音楽だけでなく、NHK「フロンティア」や〈ISSEY MIYAKE AW 2022/23〉のパリコレクション、羽生結弦の東京ドーム公演〈GIFT〉の音楽など多方面で活動。またRADWIMPSをはじめとする多数のアーティストのアレンジ・プロデュースを手がける。

PROFILE: 剣持学人
LISZTOMANIA INC.代表。広告音楽をはじめ、映画音楽など映像作品・インタラクティブ作品の音楽コンテンツプロデュース、 アーティストプロデュースを行う。アニメーション映画「音楽」にてアヌシー国際アニメーション映画祭にて最優秀音楽賞を受賞。近年の作品では2025年公開映画「ファーストキス 1ST KISS」のミュージックスーパーバイザーを担当。