
ファーストアルバムかもしれない
――ただ、面白いことに、ニューアルバム『スペシャル』はバンド感の強い作品だと思うんですよ。メンバーは変わっていないのに、どこからこのバンド感が出てきたのでしょうか。
「本当にそう思います。ファーストアルバムかもしれない。
そうは言っても、作業日程は超ギリだったんですよ。去年末に全曲できてなきゃマズかったんです。でも曲が足りない。しかも、とっ散らかった、集中力に欠けた、まとまりのないアルバムになりそうで……こりゃヤバいと思ってたら、メンバーもスタッフもそう思ってたみたいで、ドラムの佐久間(裕太)さんが〈曲出し会議をやろうよ〉と言ってくれたんですよ。今までそんなことやったことないんです。僕がデモを持っていって、〈曲ができたんで、ちょっとやりましょう〉って聴かせて、3、4回合わせたら、はい、できた!みたいな感じが常だったんです。でも、今回はみんなでああだこうだ言う会議をやったんですね。
その日までになんとか、息も絶え絶えでしたけど(笑)、4曲作って。そのうち2曲は前からあった曲で、もう1つは“トゥー・ドゥリフターズ”で、もう1つは“四月怪談”の原型。
話がそれますけど、“トゥー・ドゥリフターズ”は、前のアルバム(『SONGS』)を作ってる頃に金麦のCM曲(“ビタースウィート・サンバ”)の制作で音響ハウスに初めて行った時に原型ができたんです」
――音響ハウス……それこそムーンライダーズもあそこで制作したりしてる伝説のスタジオです。
「それがめちゃくちゃ嬉しくて。でも、録音を終えて、そのままミックスっていうスケジュールだったんです。だからミックスをしてもらっている間、することがなくなっちゃった。そこで、ピアノを弾いて曲を作り始めたんです。それでできたのが“トゥー・ドゥリフターズ”の原型なんですよ。でも変な曲だから、どうにもならないんです(笑)。『SONGS』に入れたいけど違う気がするし……って感じでその時は棚上げしちゃったんですね。
いつか、そのうちに……と思って置いておいたんだけど、曲出し会議で聴いてもらったんです。そしたら、現代音楽みたいですね、みたいな反応で(笑)。でも、(佐藤)優介が〈商業的なアイデアかどうか分かんないけど、俺だったらT・レックスみたいにする〉っていうんですよ。ブギーにするの?って聞いたら、いや、ティラノサウルス・レックスだと。なるほど、確かにパーカショニスト(シマダボーイ)もいるし、そういうことはできそうだねってことになって、次の日に(シマダ)ボーイとデモを録り始めたんです。それをみんなに送ったら、佐久間さんがバーンと入るドラムを入れて返してくれた。で、完璧! これで行こう!となって。
そこからですね、みんなでどうしようか?とアイデアを出して考えることができるようになったのって。今までは〈この曲はこうだから〉とあらかじめ決めていたことが多くて、よく佐久間さんに〈澤部くんは頑固だからね〉って言われるんですけど、本当にそうだったんだなとつくづく思いました。今回、元の弾き語りから印象が変わった曲が多いのも、バンドっぽくできたと思う部分ですね」
――メンバーの意見を柔軟に取り入れるようになった。
「そうでしょうね。既発曲以外、多重録音のデモを1曲も作らなかったのも大きい気がします。多重録音のデモを作らなかったのなんて、本当に『ひみつ』(2013年)ぶりとかですよ。『サイダーの庭』(2014年)ぐらいから〈何曲かデモを作ったので聴いておいてください〉とメンバーに言っていた記憶があります。もちろん、リズムからテンポまでコントロールするような徹底ぶりではなかったですけど、それでも、曲の根幹にまで(メンバーの)手が入ってくる作業は、一度もしたことがなかったかも。『ひみつ』に入っている“ともす灯 やどす灯”のアウトロは、みんなで話しながら作ったんですけど、それくらいしか覚えがないくらいこれまでやってこなかったんです」