キャラクターにシンクロしたことで目覚めた、真新しい感覚がここに! 話題のTVアニメ「SAKAMOTO DAYS」の主題歌となった“Method”を貫く、5人の方法論とは?

 今年2月に初のアリーナ公演〈Kroi Live Tour 2024-2025 “Unspoil” at PIA ARENA MM〉を開催するなどスケールを拡大し続けているKroiの新曲“Method”は、TVアニメ「SAKAMOTO DAYS」第2クールのオープニング・テーマとして制作された楽曲だ。しなやかなファンクネスを湛えたアンサンブル、滑らかさとエモさを共存させたヴォーカル、メンバー全員のセンスと技量が絡み合う間奏パートを含め、Kroiの独創性をさらにアップデートさせたナンバーに仕上がっている。

Kroi 『Method』 IRORI/ポニーキャニオン(2025)

 「オープニング・テーマの話をいただいたときに、〈自分たちのファンキーでポップな部分を出せるチャンスだな〉と思ったんですよね。そこにKroiのダークなイメージを共存させることで、『SAKAMOTO DAYS』で描かれる日常と戦闘のコントラストを表現できるんじゃないかなと。曲の後半でクラップが鳴って、そこからキーボードのソロに入るところがあるんですけど、あそこのパートはセッションで作っていて。だいぶ生感が強くなったんじゃないかな」(内田怜央、ヴォーカル)。

 「プリプロの段階で完成形がけっこう見えてましたね。〈音数を増やさない〉という共通認識もあったし、すごくまとめやすかった」(千葉大樹、キーボード)。

 「レコーディング前に全員で〈せーの〉で合わせて、5人だけで成立できるか確認したのもよかったですね。これまでのタイアップ曲はアレンジを作り込むことが多くて、ライヴで再現するのが大変なこともあって。今回はあらかじめライヴに近い状態で演奏してから録音したので、ステージでそのままやれるし、アレンジを加える余白もあるんじゃないかなと」(関将典、ベース)。

 「“Method”は捉え方によってロックともファンクとも言える曲だと思っていて。激しく叩いちゃうとかなりロックに寄るので、あえてテンションを上げすぎず、ずっと一定のグルーヴが続くような意識で演奏してますね」(益田英知、ドラムス)。

 「自分も〈ロックになりすぎない〉というのは念頭にありました。曲の途中で場面がガラッと変わったり、いろんなセクションがあるんですけど、ライヴのことを考えるとなるべく1本のギターでやったほうがいいなと。ファンキーなワウのカッティングを中心にしなながら、サビの直前なんかはガッツのある音で弾いています」(長谷部悠生、ギター)。

 〈覚ます 感覚 真新しい〉〈捉える好感度 オーバーロード〉など、響きの気持ち良さと鋭利な意味性を併せ持ったリリックも刺激的だ。

 「主題歌の場合、映像作品の世界観にしっかり入り込んで歌詞を書くわけですけど、それだけでは主体がない曲になってしまう。作品と自分たちの共通点みたいなものを見つけて、一人称で歌わないとダメなんですよね。“Method”の場合でいうと、『SAKAMOTO DAYS』のキャラクターが戦闘のなかで覚醒するシーンと、自分たちがライヴのときに記憶がブッ飛ぶくらい入り込んでる瞬間が重なって。普段は弾かないフレーズや歌のフェイクがいきなり出てくることがあるし、それはたぶん、自分が認知している限界を超えているんだろうなと」(内田)。

 カップリングには「ブーンバップにスライド・ギターを乗せる」という益田のアイデアに端を発した“Clay”を収録。リモートでの制作をしたことで、メンバー5人のセンスが存分に発揮されているのもこの楽曲のオリジナリティーに繋がっている。

 「益田さんが作ったビートをZoomで共有して、それぞれが音を加えていって。スタジオでセッションするよりもむしろ効率がよかったし、人間の頭で考えた歪さみたいなものもあって、すごくおもしろかったですね」(内田)。

 「新しいアプローチを取り入れたことで、バンドに風が吹いたというか。普段は怜央が曲のタネを持ってくるんですけど、他のメンバーが曲を作ったり、アレンジしてもいいし、こういうやり方はどんどん広げていきたいですね」(千葉)。

 〈らしさ〉と〈新しさ〉を同時に体現したシングル“Method”。8月末からスタートするホール・ツアー、2026年1月に行われる大阪と東京でのアリーナ・ライヴにも大いに期待したい。

 「ライヴのやり方も少しずつ変わってきてますね。以前は悠生がブルーノ・マーズのモノマネをやったりしてたんですけど(笑)」(千葉)。

 「同期の音源を用意して、リハーサルもやって。でも、お客さんは誰も笑ってなかった……」(長谷部)。

 「めっちゃおもしろかったんですけどね……。いまよりも偉くなって、もっと自由にやりたいことをやれるバンドになっていきます(笑)」(内田)。

Kroiの作品を一部紹介。
左から、2024年作『Unspoiled』、2022年作『telegraph』(共にポニーキャニオン)

Kroiやメンバーが参加した近年の作品を一部紹介。
左から、香取慎吾の2024年作『Circus Funk』(トイズファクトリー)、Nulbarichの2023年作『The Roller Skating TOUR』(ビクター)